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「あいつ、男いるんじゃねえのかな」子どもじみた嫉妬も…45歳で逝った“破滅型の野球人”盛田幸妃はなぜそれでも愛されたのか? 妻に遺した最期の言葉
text by

松永多佳倫Takarin Matsunaga
photograph bySankei Shimbun
posted2026/05/30 11:24
評論家として横浜スタジアムを訪れた盛田幸妃(2012年)。腫瘍は再発、転移を繰り返していたが、暗い顔は見せなかった
倫子にとって、夢であろうとまた盛田と会えるのは嬉しいことだった。それは亡くなった盛田にとっても同じだろうと思えた。天衣無縫で面白おかしく生きた盛田だったが、最後の最後まで信頼し、ずっと寄り添ってくれた倫子のことが、愛おしくてたまらなかったのだ。だからこそ、あの沖縄の夜の終わりに、「あいつ、男いるんじゃねえのかな」などと益体もない、子どもじみたことを口走ったのではないか。
「そうそう、ある朝、薬を飲ませたときに『昨日そこのソファーで寝ていたあの若い女は誰だ? 雇ったのか?』って言うから『私だよ』って答えたら、『違う違う、お前じゃない。もっと若くて綺麗な人だ』って。『だって私しかいないでしょ』って言うと『絶対お前じゃないから。もっと綺麗だった』って真顔で言うんですよ(笑)」
盛田との思い出を語る倫子は、やはり幸せそうだった。
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北海道の実家で四十九日の法要を済ませ、ようやく落ち着いて就寝していると、タバコの香りが漂ってくるのに気付き、倫子は目を覚ました。盛田がこよなく愛したセブンスターの匂いだった。
「お別れを言いに来たんだ」
誰も傷つかない自虐的なジョークでみんなを笑わせ、ニヒルにタバコを吹かしている盛田の姿が目に浮かんだ。
盛田幸妃が亡くなって10年…妻の新たな人生
「天気がいいとアフリカ大陸が見えたりするんです」
倫子が目を輝かせながら言った。
「CA時代はスペインまでしか飛んでなかったんですけど、一昨年初めてポルトガルに行って、やっぱり想像通りの素敵な国だなと思って。ポルトガルのロカ岬に行くと、宮本輝さんの小説のタイトルにもなった『ここに地終わり海始まる』という一文を刻んだ石碑があるんです。あと、ユーラシア大陸の最西端に来ましたっていう証明書ももらえるんですよ」
盛田が亡くなって10年が経った。闘病を支えた妻は、新たな人生を歩んでいた。

