甲子園の風BACK NUMBER
「大社の馬庭君はどうしてるんだろう…」早稲田実業“あの甲子園名試合”から2年…なぜ再戦が実現した?「実は島根って近いんですよ」「騙されねえぞ」
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井上幸太Kota Inoue
photograph byJIJI PRESS
posted2026/05/24 11:04
2年前の甲子園で“伝説的な試合”を繰り広げた大社。写真はエースの馬庭優太
試合後は二人で出雲大社へ…
あまりにも劇的な試合の象徴的なプレーに関わっているため、西村の紹介には必ずと言っていいほど大社戦についての文言が添えられる。試合後の記念撮影では、西村に気づいた大社の選手が「あの“伝説”の……」と声をかけるシーンもあった。
避けられないことではあるが、選手たちは過去にとらわれることなく、最後の夏をプレーしてほしい。そのためにも、あの一戦にかかわった選手たちが在学している今、再戦の申し出を受け入れた。はっきりとは言葉にしなかったが、この親心こそが、和泉の言う“けじめ”なのだろう。
今回の再戦は、大社にとっても一つの区切りになったようだ。石飛が言う。
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「あのとき1年生だった今の3年生たちも、2年が経って忘れていた感情があると思うんです。時間が経つことで、甲子園出場を簡単に捉えたり、自分たちも先輩たちと同じくらいの力があると勘違いしていたかもしれない。早実と試合をさせてもらって、甲子園で『すごいな』と圧倒された気持ち、“初心”を思い出す機会になったんじゃないかなと」
試合を終えた後、早実の選手が乗り込んだマイクロバスを、大社の関係者が盛大に見送り、627日ぶりの再戦は幕を閉じた。それとは別に、野球道具一式が積み込まれた大型バンを自ら駆って帰路に就く和泉は、石飛とともに出雲大社を参拝した。
参拝を終え再び学校に戻ると、いよいよ本当の別れである。校門の手前で頭を下げる石飛に対し、和泉は運転席の窓を開けて一言。
「はしゃぎすぎ」
両校と地域に様々な意味をもたらした再戦だったのは間違いないが、誰よりも待ち望み、誰よりも楽しんだのは石飛だったのかもしれない。
“彼ら”は今?
石飛は早実との再戦の意義について、こうも話していた。
「そこから『馬庭君はどうしてるんだろう』とか。それで調べてくれたら、彼を応援する人が増えるかもしれない。大社にとっても、彼にとっても励みになりますよね」
彼らは、今――。
〈つづく〉


