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「ここまで書いていいのか」青学大・原晋監督も取材…中村匠吾が執筆した“修士論文”の中身と恩師・大八木弘明の凄み「真似できないです」《明治学院大学新監督》
posted2026/04/30 11:02
明治学院大学の監督に就任した中村匠吾。箱根駅伝初出場を目指す
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涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph by
Tomosuke Imai
早大大学院で執筆した“実践的”修士論文の中身、研究の中で気づいた恩師・大八木弘明の凄さ、監督になって1カ月で掴んでいる手応えと難しさ、そして箱根駅伝「初出場」への道筋などをじっくり語ってもらった。
「午前中に走って、夕方から授業。家に帰って論文を書きつつ、各授業の課題もやらなければならない。それを1年でギュッとやるような感じだったので、もうまったく余裕がなかったですね。」
この春、中村匠吾は陸上界に様々なニュースを提供していた。現役引退、地元でのラストレース、そして何より電撃的に発表された33歳という若さでの明治学院大学・陸上競技部(長距離ブロック)監督への就任。その中ではやや地味かもしれないが、個人的に最も気になったのが早稲田大学大学院を修了し、執筆した論文が最優秀論文賞をとった、という一報だった。
現役選手、家庭での父親、そして大学院生ーー。中村が様々な“顔”を持っていたこの1年を振り返ってもらった時に出てきたのが、冒頭のような正直な言葉だ。
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取材前、執筆した修士論文を送ってもらった。タイトルは『近年好成績を残しているアメリカの長距離トレーニング方法の日本への適用可能性』。
確かに、ここ数年、800m〜10000mにおいてアメリカ勢の活躍が目覚ましい。これは端的な例に過ぎないが、昨年の世界陸上東京大会・男子5000mではコール・ホッカーが金メダルを獲得し、他2人(ニコ・ヤング、グラント・フィッシャー)も入賞という結果を残している。まだ日本人が手が届いていない5000m12分台、10000m26分台のタイムも複数の選手がマークしており、日米の格差は拡大傾向だ。
中村は論文内で日米のトレーニング方法を比較。日本側では、中村の出身大学である駒澤大学の大八木弘明総監督はもちろん、早稲田大学の花田勝彦駅伝監督、そして同じ早大大学院・平田竹男研究室の同窓という縁もあり、青山学院大学・原晋監督にも聞き取りを実施している。
「青山学院は、原さんのメディアでの発言などを見ていてもわかると思うんですけど、練習を見ていても選手たちが一本一本を本当に楽しみながらやっていました。陸上を楽しんでいる感じがする、というか。もちろん、しっかりやるところは本当にやっていましたし、シビアな部分はシビアだと思うんですけど、練習が終わったら和気藹々としていて、原さんのチーム作りのうまさ、青山学院の良さが見えました」
一方のアメリカでは、高地トレーニングの場所としても有名なアルバカーキにあるニューメキシコ大学を訪問。何か伝手があったのかと予想していたが、なんと徒手空拳での“突撃取材”だったと明かしてくれた。
「大学院入学前から、アメリカが好成績を残している秘密を探ろうという話を平田先生とはしていたのですが、ゼミを進めていく中で6月くらいに『ところでいつアメリカに行くんだ? グズグズしていると卒業できないぞ』と言われまして(笑)。そこから色々な大学とか、プロチームにメールをしたり、SNSでダイレクトメッセージを送ったりしたんですが、なかなか受け入れてくれるチームはありませんでした」
苦戦をした中でニューメキシコ大学には「なんとかOKをもらった」と言い、陸上部のダレン・ガウソンHCや選手から練習メニューやその背後にある狙い、また年間スケジュールについてもヒアリングをして、それを論文に落とし込んでいる。
「修士論文としてはスプリントトレーニングの扱いが“アンコ”になっていると思いますが、それにプラスして筋力トレーニング、高地トレーニングの2点をどう組み合わせていくかが、研究結果としての“核”になっています。ニューメキシコのコーチたちが、ここまで喋ってくれるのか、と驚くほど具体的に話をしてくれました」
中村が「本当に書いてもいいのか」と驚いたというその中身、特に論文の肝となっている「毎週木曜日のスプリントトレーニング」に関する議論は、動画インタビューでじっくり掘り下げてもらっている。
恩師・大八木弘明の「真似できない」マネジメント力とは?
高校時代にスカウトを受けた時から強烈な印象を受けたという駒大の大八木総監督。指導者になったからこそ見える恩師の凄みについては「簡単に真似できない」と言いつつ、YouTubeの「Number」チャンネルで公開中の動画インタビューの短縮版でも語ってくれた。
NumberPREMIERで前編、後編の2本立てで公開中のインタビュー動画完全版では、以下のような話題についても語っている。
- ⚫︎中村監督の指導は駒大スタイル?それとも青学大?
- ⚫︎ニューメキシコ大が実践する「毎週木曜日」の練習
- ⚫︎日米の長距離界、最も大きな違いは?
- ⚫︎「十分に目標は前倒し可能」箱根駅伝初出場への想い
- ⚫︎赴任して短期間で「明治学院大学の練習はガラッと変わった」
- ⚫︎「さすがにすごいな」同世代・大迫傑への尊敬
- ⚫︎東京五輪後は「正直モチベーションが続かなかった」
- ⚫︎2021年ニューイヤー駅伝優勝は「MGCよりも嬉しかった」
駅伝監督としての第一歩を踏み出した中村。駒澤大学、富士通、そして早大大学院と、これまでの人生で学んできたことを発揮するための大きな挑戦が始まった。
【完全版を見る】動画インタビュー完全版は前編と後編の2本立てで公開中。前編は「ここまで書いていいのかなって」青学大・原晋監督にも取材…中村匠吾監督が執筆した“修士論文”の中身とアメリカの視点「毎週木曜日に…」でご覧になれます。



