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「10年先の日本は結構やばい?」大迫傑が語る”日本長距離界への危機感” Xに投稿した「箱根にはエベレストはない」の真意「世界を本気で狙うなら…」

posted2025/12/06 17:01

 
「10年先の日本は結構やばい?」大迫傑が語る”日本長距離界への危機感” Xに投稿した「箱根にはエベレストはない」の真意「世界を本気で狙うなら…」<Number Web> photograph by Shota Matsumoto

12月7日のバレンシアマラソンに出場する大迫傑が「日本長距離界に抱く危機感」について語った

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涌井健策(Number編集部)

涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui

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Shota Matsumoto

 この夏、日本を大いに盛り上げた東京世界陸上。三浦龍司、村竹ラシッド、中島佑気ジョセフら多くの日本人選手が活躍をしたが、そのレース内容や同時期に開催されたマラソンを見て、大迫傑は大きな危機感を抱いたという。第一人者が改めて語る「世界との距離」とは何か。じっくり話を聞いた。<NumberWebインタビュー全3回の2回目/3回目へ>

大迫傑が抱く危機感

大迫 10年先を見た時に日本の長距離界って結構やばいと思うんですよね。

――どういうことですか?

大迫 10月のシカゴマラソンでアメリカのコナー・マンツ選手が2時間04分43秒で走りましたよね。政治的にはやや正しくないかもしれないんですが、「非アフリカ系」というくくりで長距離界を見た時に、コナー選手が日本記録を上回ってきたことに危機感を持ちました。自分自身もしっかりタイムを狙っていかないといけないな、と。ケニア、エチオピア、ウガンダといった東アフリカ勢が色々な国で国籍を取得して世界大会に出場している現状を見ると、長距離界では国というよりもこの人種を意識して競争心を持つことも必要だと思います。

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――それはダイバーシティを無視したり、政治的な正しさを否定しているということではないですよね?

大迫 もちろんそうです。人種差別ということではなく、スポーツが体を使った競争である以上、どのカテゴリーを意識して上を目指していくのか、というのはモチベーションを保つ上でも必要なことなのかな、と。

 それに世界陸上を見てもわかりますが、1500mでも、5000mでも、1万mでもアメリカやヨーロッパなど、東アフリカ勢以外のメダルが目立ちました。そうなってくると必然的にハーフやフルでも日本のプレゼンスが落ちてしまいます。

――確かに、東京世界陸上での男子1500m、5000m、1万mでは、これまで圧倒的な結果を残してきたケニア・エチオピアともにメダルは1個づつで、金メダルはゼロ。他のメダル7個の内訳を見ると、フランス2、アメリカ、スウェーデン、ベルギー、イギリス、ポルトガルがそれぞれ1で、白色人種の選手がメダルを5つ獲得しました。

大迫 確かに日本記録は伸びてきています。ただ、アメリカや世界の記録と比較した時にどうなのか。相対的な指標である世界ランキングはかなり落ちているわけですよね? そこにもっと多くの選手、指導者、メディアは目を向けて、危機感を持って欲しいですね。僕自身は危機感を抱いていますし、まだまだトップレベルで争えるというデータに裏付けされた自信もあるので、バレンシアマラソンに限らずに戦う準備していければと思っています。

――コナー・マンツ選手も、2022年にマラソンデビューした時のタイムは2時間8分台。そこから3年で約3分半タイムを縮めたことになります。

【次ページ】 コナー選手のプロセスは日本人の指標になる

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