炎の一筆入魂BACK NUMBER
「プロは横一線じゃない、序列があるから行動する」育成出身、何度でも這い上がるカープ大盛穂が胸に期す、スタメン再奪取への決意
text by

前原淳Jun Maehara
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2026/04/27 06:00
4月7日の巨人戦で今季初本塁打を放った大盛
今季は違う。打撃への手応えがあった。だからこそ、崩れた打撃の感覚を取り戻すためにバットを振り続けた。最後のスタメン出場となった19日、球場を後にしたのは試合終了から約2時間半後だった。翌日の休養日も球場に足を運んだ。
「ベンチにいたほうが助かると思われているのかもしれない。でも、選手でそう割り切れるのは12球団に数人しかいないと思う」
チーム事情は分かる。武器とする俊足と守備力は、試合終盤の効果的なカードだ。それでも満足できない。かつては経験豊富な選手が壁だったが、今はかつての自分と同じ立場の若手が立ちはだかる。年齢とともに壁の姿は変わっても、それを越えなければならない立場は変わらない。
ADVERTISEMENT
育成1位で入団した時からそうだった。二軍で過ごした初年度の19年、5月6日までは打率が2割を切っていた。それまでのスタメン出場は15試合。一方、同期で同学年のドラフト6位・正隨優弥は24試合にスタメン出場していた。指名順でいえば2つしか違わないが、その差は大きく感じられた。
「自分が一番下だということは分かっていたので、やるしかなかった」
1年目、終わってみればチーム最多の109試合に出場し、打率も.248まで上げた。それでも、スタメン出場79試合は正隨より18試合少なかった。目に見えない序列をひとつずつ上がっていくしかなかった。
育成から支配下へ。一軍定着へ。確実に前へ進んできた。21年オフに鈴木誠也(カブス)が海を渡り、22年オフには長野久義が巨人へ移籍。23年オフには西川龍馬(オリックス)も広島を去った。それでも23年は、支配下登録後最少のスタメン2試合に終わった。
何度でも這い上がる覚悟
挫折の連続の中で学んだのは、矢印を他者ではなく自分に向け続けることだった。
今年も開幕前に外野手争いの中心にいたわけではない。開幕2週間前の一軍合流。序列はまだ高くない。それでも、自身の境遇を嘆くことはない。その現実を受け入れた上で前を向く。
「プロは横一線じゃない。序列はある。でも、序列があるから、あの人に勝つために、あいつを抜くためにと考え、行動するんだと思う。自分は育成出身で良かったと思っています」
横一線ではない世界で、這い上がってきた。何度も這い上がる覚悟はできている。劣等感を力に変えてきた雑草魂で、混沌とした広島外野争いに再び割って入る。
