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「犬の小便みたいに投げているよ」先発転向のカープ栗林良吏をプロ初先発で“マダックス”に導いた石井弘寿コーチの言葉
posted2026/04/13 11:00
今季初先発で1安打完封を成し遂げた栗林
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前原淳Jun Maehara
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JIJI PRESS
これほどの好スタートを誰が予想できただろうか。昨季まで通算271試合すべて中継ぎ登板だった栗林良吏が、3月29日のプロ初先発で“準完全投球”を披露。続く4月5日の阪神戦でも8回1失点の好投を見せ、12日時点でWHIP(1イニングあたりのランナー数)が0.35とリーグトップに立っている。
決して順風満帆に開幕を迎えられたわけではない。開幕まで1カ月を切った二軍戦ですら毎回安打を浴びていた姿からは、この快進撃を想像することは難しかった。
3月16日公開の当コラム(『もっとリリーフの感覚で』先発転向のカープ栗林良吏が迷いを断ち切り、ようやく見出した自分だけの『先発投手像』とは)で触れたように、登板を重ねながら「先発栗林」として成長していく過程を思い描いていた。
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なぜ、ここまで急激に変われたのか。栗林本人にその理由を聞いた。
「自分は運が良かったところもあったと思います。的確なアドバイスがあって、的確なトレーニングがあって、受け取る側のかみ砕き方や捉え方で、短期間でも変わることもできるんだなと」
「腕が振れていない」理由
転機となったのは3月4日の春季教育リーグだった。中日の二軍相手に立ち上がりから空振りが取れず、直球も変化球も捉えられる。2回には下位打線に3安打を浴びて2点を失った。修正できないまま3回を終えたベンチで、バッテリーを組んだ會澤翼から指摘された。
「腕が振れていない。振っているのかもしれないけど、振っているように見えない」
意識して臨んだ4回も状況は変わらなかった。腕を振ったつもりでも球は走らず、結果も伴わない。この回も失点し、4回7安打3失点。失意のまま一軍に戻って調整する右腕に声をかけたのが、今季から広島に加わった石井弘寿投手コーチだった。
「犬の小便みたいに投げているよ」
虚を突かれた栗林に、石井コーチはその意味を説明した。
「体は内側から力を伝えていかないといけないのに、軸足が先に離れてしまっている。自分が思っている以上に、力を入れても球が行かないでしょう? 軸足がついた状態の“二足”で投げよう。“二足”で体が回れば、自分が力を入れなくても球は行くようになる。“二足投法”だよ」
その言葉はすっと腑に落ちた。もともと軸足である右足が三塁側に流れる傾向があり、さらに腕を振ろうとする意識が左肩の開きを早めていた。力の向きが分散し、本来向かうべき捕手方向へパワーが伝わっていなかった。
