野球のぼせもんBACK NUMBER
「それで本当にプロ野球選手か?」台湾で優勝させた“日本人監督”…元阪神・平野恵一が語る“台湾野球の今”「ポテンシャルすごい」「観客動員300万人突破」
text by

田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKotaro Tajiri
posted2026/03/06 11:03
台湾プロ野球・中信兄弟で監督を務める平野恵一
「そんな急に物事が上手く進むとは思っていません。だから優勝しても嬉し涙が出なかった。まだ本物のプロ集団ではないというか、もっと伸びしろがあると感じたのです。そもそも我々はユニフォームを着ている以上、ゴールはない。優勝した次の瞬間には『翌年は連覇だ』って口にしていましたし。その中で昨季は勝てませんでした。まだまだ神様が試練を与えてくれているというか、もっと頑張れよ、まだ台湾球界のために伝えなきゃいけないことはあるんだよというメッセージなのだと受け止めています」
野球を通して日本と台湾の架け橋になりたいと、平野は力を込める。
もともと熱血漢だ。思いを届ける中で台湾球界はたしかな前進を続けている。
ADVERTISEMENT
「変化は実感しています。観客動員や球団の売り上げの数字は目に見えて変わりました。その中で台湾球界のためにCPBL発展はもちろん、台湾代表チームを強くしていくことが大切だと思います」
プロ発足わずか35年…台湾が強くなるまで
台湾でプロ野球のリーグ戦が始まったのは1990年と比較的歴史は浅い。90年代中盤にはリーグの半分以上の球団が日本人監督という時代もあった。その後は身体能力の高さも相まってかメジャー流野球への志向が強まった時期もあったが、国際大会で不振が続くなどしたために近年は再び日本流の野球が取り入れられる傾向にある。現在の6チーム中5チームで首脳陣に1人以上の日本人が在籍しており、中信兄弟は平野監督を支えるコーチ陣に今季から後藤駿太(元オリックス・中日、打撃メカニクスコーチ)と西田明央(元ヤクルト、打撃戦略コーチ)を招いたほか、富邦ガーディアンズは一軍が後藤光尊監督(元オリックス・楽天)、森野将彦ヘッド兼打撃コーチ(元中日)という体制をとっている。
「やはりアジアは、アジアの野球だと。一昨年のプレミア12で台湾が優勝した時は、知り合いから日本の野球に似ているねと言われて、日本が負けて複雑でしたが、ちょっと嬉しかった自分もいたんですよね」
今年3月のWBCを契機に、台湾球界をはじめアジアの野球に一体どんな刺激が注ぎ込まれるのか。
「侍ジャパンも台湾代表も、大きな注目の中でWBCに臨むわけですから大変だと思います。ただ、野球って上手くいかないことも多いスポーツです。勝負事ではありますけど、試合の結果以前に、ファンの人たちに感動してもらえるとかもっと応援したくなると思ってもらえる野球を見せてほしいと僕は思うのです」
平野は台湾の地からそんな願いを込めてWBCを見届ける。

