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坂本花織17歳「選ばれたら奇跡やな」緊張に震えた初五輪、「屈辱的なものを感じた」“代表漏れ”の低迷期も…日本フィギュア界のエースになるまで
text by

松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph bySunao Noto/JMPA
posted2026/02/28 11:00
3大会連続で五輪に出場し、ミラノ・コルティナ五輪では個人・団体ともに銀メダルを獲得した坂本花織。精神的支柱として日本チームを支えた
変わっていった「緊張」の意味合い
迷いがなくなったのはフリーの選択だけではなかった。それは4回転ジャンプやトリプルアクセルに取り組まないという決断だ。昨シーズンまではいつかプログラムに取り入れようと練習を続けてきた。
「いまは考えていないです。できるジャンプをしっかり入れて、迫力を出すのが大事だと思っています」
ジャパンオープンから新プログラムに取り組むと、序盤は苦戦が続いた。しかし坂本は大会を重ねるごとにこのプログラムを自らの手中に収めていった。その延長線上に今季のNHK杯連覇があった。
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「ショートとフリーを揃える目標を達成できてよかったです。ショートもフリーも今季のシーズンベストを更新できました」
それでも満足感だけに浸ってはいない。
「細かく見ると、(フリーの)ジャンプで回転不足やエッジ不明瞭の2つのマークが付いてしまった。ショートではステップがレベル3だったり……」
だからこそ思う。
「まだまだ自分を超える演技ができるんじゃないかな、と」
いまも変わらず、試合のたびに坂本から聞かれる「緊張する」という言葉。だが、その同じ言葉が意味するものは、この4年の成長のなかで大きく変わってきた。
「平昌のときは、がむしゃらに前向きにやっていただけなので、4年前とは違う自分を見せつつ、自分らしくダイナミックにいきたいと思っています」
脇目も振らずに突き進んだ初めての舞台で、自分がそこにいることにさえ戸惑い緊張した4年前。いまは代表としての自覚を持ち、だから不格好な演技はできないと緊張する。何より、自分でやると決めた演技を、自分がやってきた練習でできるのだと証明してみせられるかに緊張する。
振り返れば、'19-'20シーズンを例外として、ここぞというときには必ず結果を出してきた。
「選ばれたら奇跡やな」と思っていた平昌五輪から4年。坂本は勝負強さという持ち味とともに2度目の大舞台を見据える。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

