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「妻に仕事ってウソついて、日曜の昼に…」オードリー若林がスーパーボウル会場で語った『青天』執筆秘話…主人公のルーツになった「一枚の写真」とは?
text by

一野洋Hiroshi Ichino
photograph byHiroshi Ichino
posted2026/02/22 11:00
自身初の小説となる『青天』を上梓したオードリーの若林正恭。本人が語った執筆秘話とは?
結果ではなく、一瞬のプレーに宿る永遠性。その感覚を描くには、短いエッセイでは足りなかった。そこで選んだのが、初めての小説という形だった。
若林は10年以上にわたって高校アメフトの予選を観戦し続け、そのたびに感じたことをノートに書き溜めてきたという。
「日曜日の昼とかに見に行ったりしていました。妻にウソついて、仕事だとか言って(笑)。コソコソするの好きだから」
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そのノートの中で強く印象に残っていたのが、大差のついた試合でも最後まで体をぶつけ続ける選手の姿だった。
「第4クオーターでスリーポゼッション(※タッチダウン3本分)以上離れていたら、だいたい勝てないじゃないですか。でも、それが面白くて。勝ち目がないのにブチ当たる人間を描きたかった」
その感覚は、漫才の舞台とも重なるという。
「漫才で言うと4分あって、1分ぐらいスベり続けて『もう絶対無理!』みたいな時に『あと3分どうするんだろう?』とか考えるんですよね。そうなってくるともう、勝敗とか超えて全然、違う話になってくる」
勝ち負けを超えたところで、それでも止められない人間の姿。『青天』が見つめるのは、まさにその瞬間だ。
物語の多くは若林自身の高校時代をモデルにしているようにも見える。だが、本人の言葉を借りれば、自身の経験をベースにしたノンフィクションというよりも「空気感」なのだという。
「高校生の時ってもう……30年も前だから。記憶も曖昧なので、なんとなくの雰囲気だけは覚えている。そういう“空気感”の寄せ集めですね」
主人公のあだ名の原点は…ある「一枚の写真」
そうしてフィクションベースにしたことで、主人公は現実の自分とはまったく違う存在になっていったという。
「自分よりアリ(※『青天』の主人公である中村昴)のほうが強いし早いし、上手だし、体も強い。その辺はもう全然違いますよ」
実は主人公の中村昂のあだ名「アリ」も若林の実体験からではなく、ある「一枚の写真」から生まれたものだったという。
<次回へつづく>

