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井上尚弥の超速ジャブで敗者ピカソ「これは厳しい」“弱気になった”瞬間をカメラマンは見た…はしゃぐ応援団「倒されなければいい」ピカソの目標設定
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福田直樹Naoki Fukuda
photograph byNaoki Fukuda
posted2026/01/13 11:15
井上尚弥に完敗を喫した挑戦者アラン・ピカソ。リングサイドで試合を撮影した世界的カメラマンは、「ピカソの戦略」をどう見たのか
狭いガードの隙間を縫って井上選手のジャブは当たっていました。あのスピード、精度はあらためてすごい。2ラウンド、あるいは3ラウンドくらいで、ピカソ選手が弱気になっている雰囲気を感じましたね。これは厳しい、もう守りに集中しないといけない、と。撮っている側としては、井上選手がジャブで崩していきつつ、徐々に外側からえぐっていくような展開を想像していました。
「理性的に戦える」ことがKOを逃した要因に?
それでもピカソ選手のガードは堅かったですね。印象以上にタフでもあった。当然、井上選手としても手をこまねいているわけではなく、途中からあえて打ち合いに誘導して、スキを狙いはじめた。おそらく、ピカソ選手のパンチを何発か受けて「もらっても大丈夫」という感覚があったんでしょう。もちろんクリーンヒットしないように細かく外してはいましたが、あえて左のガードを下げ、さらにゆるい構えにしながら、ピカソ選手が出てくるのを誘っているように見えました。
ぱっと見た印象だと、常に井上選手が攻めてピカソ選手が守るという展開で、あまり変化がないように思える試合だったかもしれません。ただ、井上選手はひとつのラウンドのなかで「プランAからB、Bの次はC」といった形で、めまぐるしくスタイルを変えていました。距離感やパンチの強弱、ガードや足の位置といった組み合わせを何通りも試して、崩しにかかっていた。実際、左右のボディブローなど、かなり強烈なパンチも入っていました。
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ただ、逆に言えばそのあたりが、圧倒しながらもKOに持っていけなかった要因になった可能性はあります。序盤から攻防そのものを完全に管理して、コントロールしていたので、井上選手にとっては「理性的に戦えてしまう試合」だったと思うんです。ゾーンに入ってすごいものを見せるというよりも、常に考えながら「すべて問題ない」と理解して戦っている印象というか……。このまま進めば負けようがない――そんな展開のなかで、「リスクをとって、強引にこじ開けにいくのも違うな」と感じていたのかもしれません。
圧倒的に実力の高いボクサー、それこそ井上選手の試合を撮るときは、カメラマンとして「打たれるほうに注目して撮る」ということがしばしばあります。今回も、ピカソ選手のガードの動きをずっと見ながら撮っていました。そのうえで言うと、シャッターチャンスもなかなかないくらい、スキがなかった。


