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井上尚弥「集中力を欠いた」発言の真意…元世界王者・飯田覚士が感じた最終ラウンドの”異変” 井上vs中谷の見解は?「ほぼ互角と言ってきましたが…」
 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byHiroaki Finito Yamaguchi

posted2025/12/31 17:02

井上尚弥「集中力を欠いた」発言の真意…元世界王者・飯田覚士が感じた最終ラウンドの”異変” 井上vs中谷の見解は?「ほぼ互角と言ってきましたが…」<Number Web> photograph by Hiroaki Finito Yamaguchi

アラン・ピカソの挑戦を判定ながら3-0で圧倒的勝利を収めたものの試合後の表情は冴えなかった井上尚弥

 集中力を欠いたとしても、決して油断からくるものではない。アフマダリエフ戦に使ったエネルギーがそれだけ大きかったという裏返しでもある。

「アフマダリエフ戦は十分すぎるほど体に染み込ませてきたから完璧な勝利をつかんだと思うんです。今回、ピカソ戦用に上書きしたつもりでも、染みついたものが思わず“出ちゃった”のではないかな、と。年4試合、それもラスベガス、日本、サウジアラビアと世界を回った多忙な1年になりました。打たれていないのでおそらく体のコンディションは問題なかったと思うのですが、精神的な疲労はあったのかもしれません。弟の拓真選手が、那須川天心選手と戦うことになって参謀役としてアドバイスを送っていたとしたら、自分の調整と同時にそういったこともやっていたことになりますからね。今回そうは言っても文句なしの勝利であったことは間違いないですし、ダメージなく次のビッグマッチに向かえることも大きいと感じます」

「井上尚弥vs.中谷潤人」の見解は?

 次のビッグマッチとは、言うまでもなく2026年5月に東京ドームで予定される中谷潤人との一戦である。同じ「ナイト・オブ・ザ・サムライ」のセミファイナルで登場したスーパーバンタム級初戦の中谷は20戦全勝18KOのキャリアを誇るメキシカンのセバスチャン・エルナンデスとノンタイトル12回戦で対戦。序盤こそフットワークを使って主導権を握ったものの、打たれ強く、前進しながらパンチを止めないエルナンデスに手を焼いて、ジャッジ2者が2ポイント差の3-0判定で薄氷の勝利を収めている。

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 飯田の見解はこうだ。

「中谷選手は接近戦に付き合うのがちょっと早すぎた印象ですね。(ポイントで)引き離したうえで、相手が無理やり入ってきたところをカウンターで狙っていく作戦もあったとは思うので。この相手に対して接近戦でもやれると、彼の強気なところが逆にエルナンデス選手にエンジンを掛けさせてしまって結局は相手の土俵で戦うはめになった印象です。とはいえエルナンデス選手は尻上がりに良くなってくるタイプですから、そうなる前に削っておきたいとの判断があったのかもしれません」

 偶然のバッティングで右目を腫らすことにもなった。相手は違えど同じ階級において課題は残してもダメージなく快勝した井上と、辛勝のうえにダメージまで負った中谷。現時点でどちらが有利と見るか――。

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