「今ある体をどれだけ生かせるかを重視」今季大躍進…女子ハードル・中島ひとみはナゼ30歳でも100mが速くなった？ まさかの“衝撃スプリント”秘話 

　そのスピードが、徐々にハードリングにもかみ合ってくる。7月下旬にフィンランドであった大会で、12秒71をマーク。前年までのタイムを0秒28更新し、世界選手権の参加標準記録を突破した。この過程でハードリングの改善はもちろんあったが、根本には圧倒的なスプリントの向上があった。

　日本トップレベルの女子100mH選手を教えるある指導者は、中島の走りを見てつぶやいていた。「あのスピードでハードルをやられると、ちょっと勝てる気がしない」

　中島は今、ハードラーにとってのスプリントに対し、こんな認識を持っている。

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「スピードは絶対的に大事。海外のトップ選手は11秒3とかで走るわけなので。それぐらいは必要です。ハードリングというより、スピードの土台を上げてそこからどうするか。そう考える流れがしっくり来ています」

30歳にして、様々な可能性を感じているという中島　©Wataru Sato

　速く走る。それは単純に見える動作だが、突き詰めるほどその複雑さや難易度は上がる。

　中島は高校2年で100mを11秒92で走っているが、次の自己記録が大学4年の11秒90。2024年の7年ぶりのベストが11秒88だった。今季のブレークスルーまでは辛抱が続いた。

「もう伸びないと思われている選手に…」伝えたい想い

　走りについて、何か伝えたいことはないか。

　インタビューの最後にこう聞いた。長い停滞期を経て花開いた、中島らしい答えが返ってきた。

「私は本当に長い間、記録が出なかったから、努力が必ず報われるわけではないと実感してきました。私と同じように、中学生や高校生で足が速くて、『早熟』と思われる子も多いです。それでも、自分に向き合っていたらいつかは変われる瞬間が来るかもしれないと、私は今年すごく感じたし、もう伸びないと思われてしまっている選手たちに、明るい景色があることを感じてもらえるきっかけになればなと思っています」

　多くのアスリートに届いて欲しい言葉だ。