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「今ある体をどれだけ生かせるかを重視」今季大躍進…女子ハードル・中島ひとみはナゼ30歳でも100mが速くなった? まさかの“衝撃スプリント”秘話
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加藤秀彬(朝日新聞)Hideaki Kato
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/12/30 11:03
今季終盤には専門外の100mでも好記録をマークした女子ハードルの中島ひとみ。スプリンターには珍しい細身のフィジカルでも躍進できたワケは…?
中島の身体的な特徴として、細長いふくらはぎがある。走りにおいてバネの役割を果たすこのアキレス腱を十分に生かし切れていなかった。
以前は走る際に重心が後ろに下がり気味で、かかとが地面に着いていた。特に、ハードリングでは顕著。ハードルを跳び越え、最初に接地する右足は「べたっとしていた」。その課題を克服するために掲げた接地が、「短く、軽く、鋭く」。
「自分のバネを生かすには、フラット接地よりもつま先側で。良いか悪いかではなく、自分はその方が前方向に進めることができそうだなって、試行錯誤の中で感じていました」
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全ての練習をここにつなげるため、SNSを使ってトレーニングを探した。海外選手の走りも観察し、ヒントを少しずつ集めては試した。階段を片足ケンケンで上り、かかとを着かずに弾む感覚を養う。さらに、ボックスに片足をかけて重りを持って上下し、お尻の筋肉で軸を支える接地のポジションを作り込んだ。
「自分の体にピンと来るものをつまんでくる感覚やアンテナは優れていると思っていました。だから、新しいものは迷わず採り入れました。それは今までできていなかったこと。冬季練習前に12秒台を出せたことで、自分の判断に自信を持てたことが大きかったです」
トレーニングは感覚重視「あれもこれもとなると整理できない」
スクワットなど王道のウェイトトレーニングもしたが、筋肥大するほどの重さではやっていない。
将来的に筋肉を大きくする必要性を感じながらも、「ウェイトトレーニング自体が初めてだったので、あれもこれもとなったら自分の中で整理ができない。そこは段階を踏んでやっていきたいと思っていました」
明らかな成果は、6月ごろに表れた。手動計時ながら、練習の100mで11秒0台を連発。4月は11秒6台だっただけに、急激な成長だった。
「シーズンが始まってからはほとんどかかとを着かずに走っていました。冬季練習を重ねていく中で少しずつピースがはまって、理想の走りに近づいている感じがしました」

