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ツバメのさえずり日誌BACK NUMBER
「他球団ででも現役を続けようかと」元首位打者、苦悩の決断…さらば“燕のプリンス”川端慎吾「最後の打席でも“まだやりたいなあ”って(笑)」
posted2025/12/29 11:05
スワローズ一筋で20年を過ごした「燕のプリンス」。天才的なバットコントロールで2015年に首位打者を獲得した川端の、現役引退決断までの苦悩とは?
text by

佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
Nanae Suzuki
今シーズン限りでユニフォームを脱いだ東京ヤクルトスワローズの川端慎吾内野手。その道を極めたバットマンの野球人生とは——。引退決断までの葛藤、怪我との壮絶な闘い、そしてあの名場面の知られざる舞台裏……NumberWebのインタビューで明かした。〈全2回の前編/後編を読む〉
引退を発表したのは9月27日。すでにチームの最終戦が1週間後に迫っていたこともあり、「引退試合」と銘打ったセレモニーは来年3月のオープン戦まで持ち越された。卓越したバットコントロールでファンを魅了し、3度のセ・リーグ優勝、日本一1度に貢献したスワローズの功労者である。「背番号5」はなぜ、プロ野球選手として“最終章”の幕引きを迷っていたのか。引退後、二軍打撃コーチに就任した今、その思いを明かした。
「ものすごく悩みました。本当に……。実は、球団の方と話をした直後は、現役を続けるつもりでした。他球団のユニフォームを着てでもまだ野球がしたい、と思っていました」
とめどなく涙が頬を伝った
球団側から来季の契約はできないという話を受けたのは9月中旬。昨シーズン限りで青木宣親(2026年よりGM)が引退し、野手最年長となったベテランとして覚悟はしていたつもりだった。しかし、いざその時になってみると、とめどなく涙が頬を伝った。
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「怪我に苦しんでいた数年前なら逆に、すぐに決断できていたのかもしれません。でも今シーズンは全く痛いところがなく過ごせた1年だった。それが逆に、決断に時間がかかった要因だったかもしれません」
若い頃から故障と闘ってきた川端にとって、今季はそのストレスから解放された1年だった。ファームではイースタン・リーグで75試合に出場。しかし、下位に低迷し早々に育成に舵を切った一軍からは一度も声がかかることなく、シーズン終了が迫っていた。

