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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「リングがぶっ壊れたのかと…」“中量級で世界に迫ったボクサー”再起戦でまさかの悲劇「バチンという破裂音が」内藤律樹34歳を襲った“残酷な現実”
text by

関根虎洸Kokou Sekine
photograph byKokou Sekine
posted2025/12/26 17:04
生き残りをかけた試合の開始直前、控室で集中力を高める内藤律樹
「バチン」という破裂音と、突然の異変
リッキーの先制攻撃に呑み込まれまいと、一旦距離をとって仕切り直したジェイコブは、右ストレートから左ストレートを返す。低い姿勢でパンチを見切ったリッキーはバックステップでジェイコブのパンチを外した。リッキーの左足がリングに着いた瞬間、「バチン」という乾いた破裂音がコーナー下の私にも聞こえたが、気にすることはなく、リング上のリッキーを目で追っていた。
すると突然、足元の定まらなくなったリッキーが一瞬だけ後ろを振り返るような仕草をして、力なくロープまで後退してしまう。ジェイコブのパンチは外したはずだが、その様子はかすったパンチが効いてしまい、足にきてしまったボクサーの動きにも似ていた。なぜ……。ジェイコブの表情が一瞬で鋭く変化したのが見えた。とにかく、ロープを背にしたリッキーはガードを挙げてブロッキングで防御を続ける。
リッキーの手が出ない。ガードの上を連打されたリッキーは足の踏ん張りが利かず、バランスを崩してリングに転がってしまった。8カウントで立ち上がったリッキーだが、足元がおぼつかない。レフリーはリッキーの肩に手を置きながら、首を横に振って試合終了を合図した。
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騒然とするリング上でコーナーの椅子に腰を下ろしたリッキーは、私を見つけると眉間にしわを寄せながら呟いた。
「脱臼です。たぶん脱臼だと思います」
リングに入ったセコンドのコーベンがリッキーのグローブとシューズを外す。そしてリングに上がったドクターに促されて左足の靴下を脱がせると、素足になったリッキーの足首を見たドクターは、その症状から「……アキレス・テンダン・ラプチャー」と呟いた。
アキレス腱断裂。
リング上ではジェイコブが勝利者インタビューを受けている。
内藤律樹のオーストラリア第4戦は、1ラウンドTKO負けに終わった。


