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「リングがぶっ壊れたのかと…」“中量級で世界に迫ったボクサー”再起戦でまさかの悲劇「バチンという破裂音が」内藤律樹34歳を襲った“残酷な現実”
text by

関根虎洸Kokou Sekine
photograph byKokou Sekine
posted2025/12/26 17:04
生き残りをかけた試合の開始直前、控室で集中力を高める内藤律樹
リッキーがオーストラリアで見つけた“居場所”
試合の翌日、リッキーはSNSに英語で次のようなメッセージをポストした。
「昨晩はありがとうございました。第1ラウンドで怪我をしてしまいました。ボス、家族、そして試合を楽しみにしていたファンの皆様に申し訳なく思います。マネージャーのブレンドンと、このような機会を与えてくれたプロモーターのノーリミット・ボクシングにも申し訳なく思っています。必ず治して、強くなって戻ってきます」
試合後に目にしたのは、私の知らないリッキーの姿だった。
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それは敗戦後の周囲への対応である。私がセコンドを担当した試合でのリッキーの敗戦は計3回。負けた後はいつも控室で泣き崩れて、引退を口にした。しかし現在のリッキーは過酷な現実を受け入れて、周囲への気配りを見せている。きっと自分を受け入れてくれた周囲への感謝の気持ちが芽生えたからだろう。
横浜に住む父・カシアス内藤も、ジムでマネージャーを務めるリッキーの母も日本へ帰国して手術を受けることを勧めたが、リッキーは迷った末に現地で手術することを選択し、試合から5日後にブリスベンの病院で手術を受けた。
手術は無事に成功し、担当の医師は4カ月のリハビリを経て、6カ月後には試合も可能という診断を下したという。
「もうギプスが外れて、いまは松葉杖なしでも、ゆっくりなら歩けるようになりました。毎日ジムには顔を出していますよ」
先日、電話口からいつもの前向きな言葉が聞こえてきた。
リッキーはオーストラリアに自分の居場所を見つけたのだろう。それは周囲の人たちの協力なしにはありえないことだった。たったひとり、言葉も話せなかった異国の地で、現地の人々に助けられ、自らの拳でチャンスを掴み取った。そうしてリングに立つ姿は、日本にいたころとは異なる輝きを放っていた。
内藤律樹、34歳。何度躓いても、挑戦は続く。
<前編とあわせてお読みください>


