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井上尚弥にTKO負けから7カ月…カルデナス衝撃KO「もう誰も怖くない」じつは試合後に話していた“秘策”「なぜ中谷潤人とスパーを?」 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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posted2025/12/24 11:02

井上尚弥にTKO負けから7カ月…カルデナス衝撃KO「もう誰も怖くない」じつは試合後に話していた“秘策”「なぜ中谷潤人とスパーを?」<Number Web> photograph by Daisuke Sugiura

復帰戦をKOで飾ったラモン・カルデナス(30歳)

 改めて振り返っても、今年5月4日の井上尚弥戦は見応えたっぷりのファイトだった。戦前、知名度は低かったメキシコ系アメリカ人であるカルデナスは、2回に井上へ強烈な左フックのカウンターをヒットしてダウンを奪う。T-モバイルアリーナに足を運んだファンは、井上がマットに沈んだあの瞬間の戦慄を忘れることはないはずだ。

 倒れた直後は明らかなダメージを感じさせた“モンスター”だったが、その後、すぐに態勢を立て直し、ダウンを奪い返した上で8回TKO勝ちを飾ったのはさすがだった。それでもカルデナスも最後まで得意の左フックを振り回し、“あわや”と感じさせ続けた。先ほど“挫折”とは記したが、最終的に敗れはしても、ここでの敗戦は挑戦者にとって必ずしも苦い経験だけではなかったようだ。

 ロブレス戦後、「井上戦で学んだ最も大事なことは?」と尋ねると、カルデナスからは間髪入れずにポジティブな答えが返ってきた。

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 「感じられたのは、自分はそこに属している、トップレベルにいる人間だということだ。あとはそこに戻るだけ。今夜、それを少し示せたと思う。私はこれまで一度も試合から逃げたことはない。次に何が起きても、また誰とでも戦う。そして、ここからはもっと大きく、もっと良い未来に進んでいくよ」

「私はすでにイノウエと戦っている」

 実際にロブレス戦でのカルデナスは、これまで以上に自信を持って戦っているようにも見えた。相手のパンチを軽く受け流し、軽く被弾しても慌てない。パンチの的確さはこれまで通りだが、仕上げは得意の左フックではなかった。この日は2度にわたって右パンチで倒して多彩さを示したのは収穫と言えるのではないか。

 久々の再起戦での快勝。しかも強敵相手でも落ち着いていたことを問われ、“当たり前だろう”とでも言わんばかりだったカルデナスの表情も印象的だった。

「私はすでにイノウエと戦っているのだから。彼はこの階級のトップ中のトップだし、その相手ともう戦った。つまり、もう“メインガイ”を経験しているということ。他のインタビューでも言ったけど、もう誰も怖くないよ」

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