ボクシングPRESSBACK NUMBER

「なぜ堤聖也を仕留めなかったのか」英記者が43歳ドネアに疑問…蘇った6年前の井上尚弥戦、引退説に「ツツミ戦が最後であってほしい」

posted2025/12/20 06:01

 
「なぜ堤聖也を仕留めなかったのか」英記者が43歳ドネアに疑問…蘇った6年前の井上尚弥戦、引退説に「ツツミ戦が最後であってほしい」<Number Web> photograph by Hiroaki Finito Yamaguchi

43歳とは思えないキレを見せたノニト・ドネア(左)

text by

杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

PROFILE

photograph by

Hiroaki Finito Yamaguchi

“名勝負製造機”とも評される堤聖也と壮絶な12ラウンドを戦ったノニト・ドネア。そんな43歳のレジェンドに特別な思いを寄せるのが、米リング誌の編集人を務めるトム・グレイ記者だ。同誌でPFPランキングのパネリストを務めるジャーナリスト杉浦大介氏が取材した。【NumberWebレポート全2回の後編/前編も公開中】

 12月17日、両国国技館で行われたWBA世界バンタム級タイトル戦はノニト・ドネアの頑張りが目立った一戦でもあった。この試合で最大の効果を生み出したのは一般的にドネアの“シグネチャーパンチ”として認識されている左フックではなく、右パンチ。ドネアは右カウンターで王者・堤聖也をダウン寸前に追い込みながら、それでも勝利を手にするには至らなかった。43歳の元5階級制覇王者に何が起こっていたのか。

 リングマガジンの編集人を務めるトム・グレイ氏はドネアの長いキャリアを間近で見守ってきたライターの一人。試合後、ドネアの過去、現在、未来についてじっくりと語ってもらった。(以下、グレイ記者の一人語り)

堤も警戒していた“ドネアの右”

 ツツミ対ドネア戦は素晴らしい内容の戦いになったが、ドネアにとっての最大の勝機は第4ラウンドに訪れた。まだ動きにキレがあったこの回終盤、カウンターの右アッパーをダブルでヒット。ラウンド終盤にこのパワーパンチをまともに浴びたツツミは、コーナーまでまっすぐに戻れないほどのダメージを受けていた。

ADVERTISEMENT

 左フックが代名詞のように語られるドネアだが、ツツミを相手に最大の効果を発揮したパンチが右だったことに私は驚いてはいない。思い出して欲しい。ナオヤ・イノウエとの激闘でイノウエを効かせたのも右パンチだった。

 ドネアにとって左こそが必殺のパンチなのは間違いないが、右もある。彼は生まれながらのカウンターパンチャーで、ノックアウトアーティスト。両手で倒せるんだ。特にバンタム級での戦いではそのパワーを一度も失っていない。

 スーパーバンタム級、フェザー級で戦った際には少し相手の反応が薄れたが、118パウンドのバンタム級では常にダメージを与えられる。今回、ツツミは身をもってそれを知った。鼻が折れたと思うし、アッパーで脚を奪われた。それでも耐えられたのは、ツツミが若く、コンディションが抜群だったからだ。

【次ページ】 グレイ記者の心残り「ドネアはなぜ仕掛けなかった」

1 2 3 NEXT
#堤聖也
#ノニト・ドネア
#井上尚弥

ボクシングの前後の記事

ページトップ