メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「ヤマに“負けるという選択肢はない”」ロバーツ監督もカーショウもフリーマンもドジャースOBも山本由伸に感嘆「この上なく特別」LA紙が聞いた話
text by

ジャック・ハリスJack Harris
photograph byROBERT GAUTHIER/Los Angeles Times
posted2025/12/24 06:03
ワールドシリーズで圧巻の投球を見せた山本由伸がベンチに戻ると、大谷翔平らチームメイトは特大のリスペクトで迎え入れた
「狙ったところに投げ分け、球速に変化をつけながら、打者のタイミングをはずしていた」と捕手のウィル・スミスは語る。スミスは打撃でも2安打3打点とチームをけん引した。
「3回が終わる頃には、かなり手応えを感じていたようだ」とマーク・プライアー投手コーチは付け加えた。
「どの球でも勝負できる、とね」
ADVERTISEMENT
こうした多彩で無駄のない投球により、山本は長いイニングを投げ抜けた。ボールに変化をつけながら、ブルージェイズの積極性を逆手に取ったのだ。
負けるという選択肢はない…まさにだ
その結果、ドジャース打線はブルージェイズのベテラン先発投手ケビン・ガウスマンに対し、攻略の糸口をつかむ余裕を得た。ガウスマンは初回にスミスにタイムリーヒットを許したものの、その後はストレート主体の投球で17打者連続アウトを奪った。しかし7回、甘く入ったストレートをスミスとマンシーにとらえられ、それぞれソロホームランを浴びた。
「ヤマにとっては多少の余裕になったね」とマンシー。
「あの時点で、彼はもう完全にリズムをつかんでいたように見えたから」
8回にドジャースがさらに2点を加えてリードを広げると、山本は残り2イニングも危なげなく片づけ、ブルペンが動き出す気配はほとんどなかった。
8回には3者連続三振。カーブとストレートで三振を奪う。山本が9回のマウンドに上がる際、プライアーやデーブ・ロバーツ監督と話し合う必要はほとんどなかった。ロバーツは冗談めかして「あと30球か40球はいけたんじゃないか」と語った。
「このシリーズの前に、彼は『負けるという選択肢はない』と言っていたが、今夜はまさにそんな気迫を見せていた」とロバーツは語った。
「立ち上がりは球数がたくさんいっただけに、最後までいけるとは思いませんでした」と、山本は通訳を介してコメントした。
「しっかり1イニングずつ投げていけたので結果につながったと思います」
最終回も難なく終わらせた。まずトロントのスター、ブラディミール・ゲレロJr.をゴロに打ち取り、最後は三塁手のマンシーがポップフライを捕球した。
フリーマンもカーショーも大絶賛
その直後の山本の穏やかな反応──マウンドの前でスミスとハグを交わしながら、ただ笑みを浮かべるだけ──は、チームの面々が抱いていた驚きとは対照的だった。
「抜群だった。気迫に満ちあふれ、まさに特別な投球だった」とロバーツは評した。
「4、5種類の球を投げ分けて、ノミだって狙えるんじゃないかと思うほどの精度だった」とフリーマンが付け加えた。
「どこにでも思いどおりに投げ込めるんだ」
将来の殿堂入りが確実視されるチームメイトのクレイトン・カーショーは、プレーオフで連続完投を目にするとは思ってもみなかったと語った。

