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ドジャース山本由伸が証言「先生は僕を作った人です」伝説的リリーフの“重要人物”、矢田先生とは何者か? ドジャース球団社長「信じられなかった」山本の練習法―2025年下半期読まれた記事
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生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2025/12/20 11:01
ワールドシリーズ連覇を決め、肩を組むドジャース山本由伸と大谷翔平
このコメントからも好奇心、積極性、受容性が感じられる。自分たちの価値観とは違うものを前にしても、否定からは入らない。
ただし、大谷翔平との契約にあたり、重要な役割を果たした球団社長のアンドリュー・フリードマンは当初は懐疑的だったという。ところが、京セラドームで信じられないものを目撃し、猜疑心は消えた。
山本が右中間フェンス際からホームプレートへ、ノーステップで矢のような送球を放ったからだ。
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日本のプロ野球関係者にとっても、山本のアプローチは珍しいらしい。とある球団の投手コーチはこう話す。
「いま、遠投をやっている投手は珍しいと思います。その意味でも、バファローズにいる時から山本君のトレーニングは特殊だと思ってました」
そうした“奇異なアプローチ”をドジャースのスタッフはこう捉えた。
Something Special.
山本の能力に特別なものを認め、メジャーリーグで1球だって投げていないにもかかわらず、12年で480億円の投資を決めたのだ。
山本由伸「先生は僕を作った人です」
山本由伸がドジャースに移籍するにあたって、帯同したのが「矢田先生」こと、大阪で接骨院を営む矢田氏である。接骨院のホームページを開き、スタッフ紹介を見ると、映画『007』をもじった矢田氏の写真があり、こんなメッセージが書かれている。
<「世の中は夢か現か幻か」
夢の外へー目覚めていく→超えて行く
夢の内へー夢中になる →深さを求める
私は、井上陽水の「夢の中へ」が大好きです。
現実を受けとめ、一緒に夢を追いかけましょう。>
ワールドシリーズ第6戦が終わってから治療にあたり、第7戦当日にも山本の状態を確認、連投に太鼓判を押したのはこの矢田氏である。
「先生は僕を作った人です」と山本は語る。おそらく、入団交渉の過程で矢田氏がどの程度、山本、そして球団にコミットするかということも交渉のテーブルに挙がったと推測される。
山本の移籍が決まってから、矢田氏はドジャースのスタッフに治療哲学を話す機会があった(こうした機会を設けるドジャースもまたユニークだ)。そこで矢田氏は、
「山本は『ドラゴンボールZ』の孫悟空や、『ワンパンマン』のような存在です」
と説明したという。その心は――。


