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蛍光灯で殴り合い、大流血して…メキシコ人デスマッチファイター「もっと日本にいたい」ビオレント・ジャックの切実な思い「外国人がって…でも、ここがオレの家」
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2025/12/14 17:21
プロレスリングFREEDOMSの現シングル王者、ビオレント・ジャック
「日本のお父さん」との絆
10月の後楽園大会では、FREEDOMSの社長でもある佐々木貴を相手に初防衛に成功した。ジャックにとって佐々木は、初来日の時から「何か困ったことはないか?」と面倒を見てくれる「日本のお父さん」だ。11月にはやはりベテランのマンモス佐々木とタイトルマッチ。
FREEDOMS旗揚げメンバーのマンモスだが、シングル王座挑戦はこれが初めてだった。旗揚げ時に欠場していたことから「自分は支える側に回ろう」と考えてきたのだ。だがジャックはマンモスとのタッグでベルトを巻いたこともあり、その実力を分かっていたし「たくさん勉強させてもらった」。マンモスがずっと挑戦してこないので、自分からチャレンジャーに指名したのだ。
ジャックの思いに触発されたように、タイトル戦でのマンモスは強くて怖かった。なんとか勝ったジャックは、来日したての頃の思い出を語った。「生徒(弟子)にしてください」とマンモスにお願いしたこと。2人で焼肉を食べに行って、ハイボールを18杯飲んだこと。それに店を出たマンモスがコンビニで酒を買い足していたことも。
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「マンモさんにはプロレスだけじゃなく人間としてもいろいろ教わった。マンモさんはどういう人か? 謙遜……そう、謙虚。ジェントルマンだから」
蛍光灯で殴り合い、血を流して、ハッピーになる
インタビューの最後に、これからどんな人生を送りたいか、その目標を聞いた。ベルトの防衛回数、勝ちたい相手、あるいはお金や人気だって大事だ。
「ハッピーであること」
ジャックはそう答えた。
「もっといい選手になりたいし、いいお父さんになりたい。それは何のためか。仲間や家族がハッピーになるため。お金があってもハッピーじゃないこともあるから。娘にもそれは教えたい」
メキシコから来た“怪獣”は蛍光灯で殴り合い、大量の血を流して日本でハッピーになったのだ。
「そう、楽しいから日本にいる。それが変わらないのが一番だね」

