濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
蛍光灯で殴り合い、大流血して…メキシコ人デスマッチファイター「もっと日本にいたい」ビオレント・ジャックの切実な思い「外国人がって…でも、ここがオレの家」
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2025/12/14 17:21
プロレスリングFREEDOMSの現シングル王者、ビオレント・ジャック
「外国人が、外国人がって…でも、ここがオレの家」
5歳の娘は「もうワタシより日本語うまい」と笑うジャック。試合を見にくることもあるそうだ。
「最初はワタシのこと相撲レスラーと思ってたみたい。家で友だちの相撲カードを見せてもらってたら“パパがいないよ”って(笑)」
8月、2年ぶりに獲得したチャンピオンベルトを見せると喜んでくれた。それからは試合のたびに「今日は勝った? 新しいベルトもらった?」と聞いてくる。
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「娘は公園に行っても、すぐ友達が作れる」と嬉しそうに言うジャックには、最近少し不安なこともある。日本に蔓延してきた排外的な空気だ。
8月28日の後楽園ホール大会、杉浦透を下しチャンピオンになったジャックは「今はいろいろある」のだとリング上で言った。
「外国人が、外国人がって」
そしてこう続けた。
「でも関係ない。ここがオレの家、FREEDOMSの選手とスタッフ、ファンがオレの家族。日本に住んでるメキシコの怪獣が家を守る!」
「アメリカにはヘイト、ありました」
バックステージで、あらためて聞いてみる。今の日本、外国の人には大変ですか。
「オレは仕方ない。プロレスラーで、こういう(いかつい)見た目だから。でも(日本に住む外国人には)まだ日本語が得意じゃない人もいる」
そういう人を助けたいとジャック。娘に悲しい思いをさせたくないという気持ちも強い。
「日本に住む前、アメリカのテキサスにいたことがあるけど、家とかコンビニの前にいると悪いこと言われたりして。ヘイト、ありました。日本にはそういうふうになってほしくない。
日本はいつもワタシをあたたかく迎えてくれた。だから人を分けたり、(逆に)ひとまとめにするような言葉は少し危ないと思う」
日本に住んで、頑張っている外国人がリスペクトされるようにしたい。そういう人間がいることが広まってほしいとジャック。
「大事なのは努力やリスペクト、一緒に頑張る気持ち。プロレスは、そういう“つながり”とか“一つになる気持ち”を感じられる場所だと思う」

