敗戦も「那須川天心の“商品価値”は下がっていない」元世界王者がプロモーター目線で見た“可能性”とは？「彼の人間臭さが出るファイトを見たい」 

那須川の価値は変わっていない

　キックボクシングからボクシングに転向し、まだ約2年半。那須川本人も敗戦後の会見で「ボクシングの深みを知った」と話しており、ますます意欲を燃やしている。プロモーターの顔を持つ伊藤は、たとえ「無敗」という肩書がなくなっても、那須川の価値は変わらないと話す。

「モンスターにならなくても、すでに『那須川天心』というブランドがあるので。これからも楽しみ。ボクシングの色をどうつけていくのか。近い将来、必ず世界チャンピオンになるでしょうし、焦る必要はないです。

　骨のある相手と3試合、4試合こなせば、もっと引き出しは増えてくるはず。世界王座をただ取るだけのボクサーではありません。そこから誰と戦っていくのかが、関心を持たれる選手だと思います」

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　将来的には、キック時代からの宿敵・武居由樹（大橋）との一戦も、当然楽しみなカードだという。「すぐにではなく、少し先のほうが盛り上がるのかな」。一時期は待望のビッグマッチと期待されながら、実現に至らなかった背景も、ドラマを構成する要素の一つになる。

　伊藤は、那須川がまだ見せていない一面に興味があるという。

「人間臭さがにじみ出るようなファイトをいつか見たいなって。あの天心が必死だぞ、と」

他のボクサーにないスター性

　那須川の人気は会場に足を運んで、再確認した。「アンチ」と言われる否定的な感情を持つ人たちは一定数いるかもしれないが、それもスターの証。グッズ売り場に長蛇の列ができ、性別、年齢層に関係なく、幅広い人たちから支持されているのをその目で見た。

「グッズが飛ぶように売れるボクサーって、僕は見たことがないです」

　負けてなお注目される希有な存在。期待はまだまだ大きい。

「那須川は王様でなくても、面白い試合をできると思うので」

　再起へのストーリーが早くも気になる。

〈全2回の2回目／はじめから読む〉

#1から読む

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