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[リアリストの肖像]吉田孝行「常に決勝戦だと思って」
posted2025/11/21 09:00
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Shinryo Saeki
勝手に目が合った錯覚に陥る。
ヴィッセル神戸のトレーニング中、グラウンドで腕組みをして立つ吉田孝行が至るところに目線を飛ばしてくるからだ。それは練習が始まる前も、練習中も、終わった後までも続く。ピリッと張り詰めた程よい緊張感は、指揮官の鋭い眼光がつくり出しているのだと理解できる。
「選手もそうですけどスタッフがどうしているかも僕は見ます。みんなで練習をつくるんだぞという空気を僕は何より大切にしているので。ダラッとやるのが好きじゃない。とにかくテンポよくやりたいんで次のセッションに移るときもすぐレストを取って、すぐ準備をさせて。水の置きどころや動線すら見ますよ。選手もずっと監督が見ているとなれば意識も違うでしょうから」
全体練習から居残り練習までチームをキビキビと動かす目であり、情報収集の目であり、そして配慮の目でもある。ACLエリートが入ってくる秋は再び過密日程となり、個々がやりすぎてケガにつながらないよう「そろそろあと何本かで終わろうや」と絶妙のタイミングで声を掛ける。チームからはこの目に守られているという安心感が同時に伝わってくる。
ヴィッセルは吉田のもとで黄金期を迎えている。2023年にJ1初制覇を果たすと、昨年は2連覇と天皇杯の2冠を達成。大迫勇也、武藤嘉紀、酒井高徳らタレントを束ね、穴をつくらない連動したハイプレスから、ボールを奪えば一気にゴールに迫っていく。90分間高止まりした強度とハードワークのスタイルは、クラブの新たな代名詞となっている。今季は鹿島アントラーズ以来の3連覇は逃したものの、天皇杯は準決勝まで勝ち進み(11月14日時点)、ACLエリートもリーグステージの東地区で首位を走る。
こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
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