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佐々木麟太郎20歳の本音「孤独感もプレッシャーもある」ソフトバンク1位指名でも即断せず…スタンフォード大で見えた「野球と学業」人生のプライオリティ
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杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byEakin Howard/Getty Images
posted2025/11/20 11:04
ドラフト会議を前に、将来のビジョンを明かしていた佐々木麟太郎
「アメリカでは長所を伸ばすことに重点が置かれ、だから何かの力を伸ばせる可能性があるのなら大学は休学制度が利用できるんです。野球選手であれば、メジャーに行く選手は学業を中断できる。自分のタイミングで大学に戻ってきて、また勉強して卒業もできる。だから私も勉強のことを考えつつ、今は時間的にリミットがある野球にもっとフォーカスしてやっていきたいなとも感じています。そういった考えができるようになったのだから、アメリカを選んですごく良かったなと思っています」
そこでの言葉通り、学業には“いつまでにやらなければいけない”という期限があるわけではない。特にアメリカでは事業が落ち着いてから復学する社長がいるくらい。この点が日本とは違い、休学が認められる期間の制限は存在しない。
それに対し、体力がものをいう野球は若いうちが勝負。日米ドラフトで候補生となるほどの評価の高さがあるのであれば、なおさらベースボール・プレーヤーとしての“今”を大事にすべきであり、麟太郎もアメリカでの1年でそれに気付いたのだろう。そういった長期視野での人生のタイムスケジュールが見えてきたことも、スタンフォード大で学んだ収穫の一つだったに違いない。
NPB12球団への意思表示はなかった
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とはいえ、木下氏が4つの選択肢を挙げていることからも分かる通り、麟太郎が現時点でプロ入りだけに完全に照準を定めたというわけでもない。“今のプライオリティ”が野球だったとしても、最適のプレー環境がプロだとは限らない。
関係者の話を聞く限り、NPBでのドラフト前にも12球団に対して「指名してくれて構わない」といった意思表示はまったくなかったという。場合によっては日本のプロ球団に指名権を無駄にさせてしまう可能性があるのだから、思慮深い麟太郎がそれを望まなかったのは理解できる。
今はまずスタンフォード大での2年目に集中し、“人生の選択”はその後になる。当然のことだが、2026年2月からスタートする来季は極めて重要な時間。1年目が米生活に慣れ、経験を積む年だったのであれば、2年生は勝負の時である。

