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侍ジャパンの“予行演習”にMLB審判員がポツリ「日本人はまじめ」日韓戦“ピッチクロック狂騒曲”の舞台裏とWBCに持ち越した「本当の課題」
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小西斗真Toma Konishi
photograph byNanae Suzuki
posted2025/11/19 11:02
ピッチコムを操作する捕手の坂本(阪神)
「秒数」より重要な課題が…
むしろ春に持ち越した課題は「秒数」より「間(ま)」かもしれない。日本の野球は投手も打者も間を重んじる。カウントダウンを気にするあまり、大切な間を失い、一本調子になる。いわゆる投げ急ぎという状態だ。第1戦で登板した北山亘基(日本ハム)は、残り秒数に追われて必ず打者に投げると見抜かれてしまい、走者に二盗を許したことを反省していた。けん制球をはさむ余裕を失っていたからだ。
また登板前日から「打者の間合いにならないこと。時間の迫っている中でも自分の間合いで投げられるようにしたい」と話していた高橋宏斗(中日)だが、第2戦で2イニングを投げて4三振を奪いながら、本塁打を浴び、3四死球と乱れた。本来なら「間」は投手に主導権があるはずだが「時間」という今までの日本野球にはない概念が入ることにより、自ら明け渡してしまったようだ。
MLB審判員が「日本人はまじめ」
とはいえ、今回の「ピッチクロック狂騒曲」とも言える10日間で、最も象徴的なのはMLB審判員から井端監督が言われたという言葉ではないか。「日本人はまじめ」。これは「時間がなければタイムを取ればいいのに」という意味だが、ルールに限ったことではないだろう。
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WBCの4カ月も前から候補選手がシーズンオフそっちのけで集まり、未知のルールに適応する努力を惜しまない。そのために自分(審判員)をわざわざ呼び寄せ、知識を得ようとする。アメリカもドミニカ共和国も優勝目指して戦う気持ちはあるが、前年に合宿を呼びかけても、恐らく誰一人集まらないだろう。
そもそも集まった選手たちは、代表招集が確約されているわけでもない。まさしく「まじめ」。WBCへのこの熱量が、ぜひ世界一という結果で報われてほしい。


