第102回箱根駅伝(2026)BACK NUMBER
「同期と一緒に1月3日まで全力で走り切りたい」選手とともに駆け抜けた4年間。現役大学生の学連幹事が、第102回箱根駅伝を前に語った決意
text by

和田悟志Satoshi Wada
photograph byShiro Miyake
posted2025/11/26 17:00
左から秋山姫歌さん、次呂久直子さん、三浦拓也さん、長束文さん
──我々、記者も大会等では報道係の皆さんにお世話になっており、大変な思いをさせたこともあったと思います(苦笑)。
秋山 一番大変なことは、出場大学と報道関係者の間で板挟みになってしまうことがあることですね。うまく落としどころを見つけて、提案するようにしています。
三浦 たくましいです。
次呂久 ほんわかした雰囲気ですが、意外と言うべき時にはズバッと言ってくれるので、本当にかっこいいです。
──日本学連の幹事長はどんなことをやるのでしょうか?
三浦 業務としては関東学連の幹事長と似ているところがあります。主催する大会の仕切りは私が中心となって大会期間中は動いています。日本学連の幹事は7人しかいないんですけど、僕ともうひとりの4年生が中心になり、後輩たちに教えながら、指揮をとってやっています。
──日本学連の幹事長としては箱根駅伝にはどのように関わっているのでしょうか。
三浦 僕らも年末に駅伝(富士山女子駅伝)があるので、大会の前日の物品搬入の手伝いを行なったり、当日は指示をもらって、各中継所に散らばって動いています。
──箱根駅伝は前回が101回大会でした。100回を一区切りとすると、新しい出発の大会でもあったように思います。
次呂久 確かに、新たな一歩みたいな感じが多くあったように思います。
長束 今振り返ると、出場校の意見をすごく柔軟に取り入れた大会だったのかなと思っています。例えば、給水もそうですし(※普段から飲み慣れているドリンクを箱根駅伝でも摂りたいという要望を受けて、101回大会からはボトルの中身を各校で用意できるようになった)、各大学への補助金の額も変わりました。出場大学とコミュニケーションをとって、いろいろ変えたところが多かったと思います。
選手ファーストが共通認識
次呂久 私は昨年度から幹事長を務めていますが、実は自分自身でもびっくりするぐらい昨年度の記憶がないんです。3年生で幹事長になるとは思っていなかったので、目の前のことを一つひとつクリアしていくのに精一杯でした。もらった意見はできるだけ改善していきたいと思いつつも、プラスアルファのことがあまりできませんでした。でも、100回大会の報告書などを読み漁って、その中で挙がってきた意見はできる限り取り入れて改善しようと思いましたし、できる限りのことはやったかなと思っています。
──箱根駅伝のような大きな大会が学生を中心に運営されていること自体に驚きますが、先輩から受け継いできたもので、皆さんが大事にしているのはどんなことですか?
秋山 (回答を)用意してきました! “選手ファーストの精神”はずっと引き継がれていると思っています。私の担当は、記者の方々からいろんな要望を受けますが、それが結果的に選手たちの負担を増やしてしまうことが絶対にないように気をつけています。選手たちがより良く走り、パフォーマンスを発揮できるように動いていることは、ずっと変わっていません。
次呂久 “選手ファースト”というのは、他の担当を含め全体としての共通認識ですね。あとは運営面。昨年度に法人化しましたが、その中でも学生自治、学生主体というところだけは絶対にブレないようにしています。もちろん困った時には先生方に相談することはあるんですけど、「どうしたらいいですか?」と丸投げするのではなく、「こうしようと思っていますが、どう思いますか?」と、学生たちで考えて意見を出した上で、助言をもらうようにしています。学生が中心になって動いていくことは、関東学連が創立以来、ずっと続けてきたことです。そうやってここまで100年以上続いてきた団体なんです。
長束 1年生の時は先輩に言われるがままに、「はい、やります」という感じで、その理由をあまり考えずに、とりあえず動いていましたが、学年が上がるにつれて、その背景にも目を向けるようになり、自分自身の業務を効率的にしたり、内容に納得した上で業務ができるようになりました。受動的ではなく、能動的に動いていけるというのは、学生中心ということにつながっているのかなと思います。
──皆さん、大学4年生ということで、第102回箱根駅伝は皆さんにとっても集大成になります。どんな大会にしたいですか?
三浦 4年生は12人いるんですけど、4年間一緒にやってきました。日本学連で培った経験を活かして、最後の箱根駅伝に関わりたいです。みんないろいろな思いを抱えていると思うんですけど、箱根駅伝が終わったら「4年間、頑張った」とみんなで称え合いたいですね。走っている選手だけでなく、僕らのように中継所で運営に関わっている人もいますし、陸上競技協会の方々も正月返上で審判業務にあたってくださっています。また、沿道の走路員一人ひとりにもいろんな背景があります。そういう方々の協力があって大会は成り立っています。そういった裏側にもちょっと目を向けていただけると、箱根駅伝の見方も少し変わってくるかもしれません。
長束 関東学連の一員としては、いろんな場面で頑張っている一人ひとりの思いの集大成となる大会であってほしいですね。それに、箱根駅伝を走れる選手もいれば、逆に走れなかった選手もいます。そういったいろんな方々の思いを裏切らないような大会にしたいです。その責任が私たちにはあります。
秋山 私も、同期と一緒に1月3日まで全力で走り切りたい! 高校生の頃は、表に立って何かをやるタイプではありませんでした。大学4年間でこんなに成長できるんだぞっていうのを後輩たちに見てもらいたいです。
次呂久 ほとんどみんなに言われちゃいましたね……(笑)。みんなから「同期が」という言葉が出てきたように、本当に同期で助け合いながら、支え合いながらここまでやってきました。私自身も支えてもらってきた部分が大きいです。後輩たちにも、この先輩たちと一緒にやれて良かったと思ってもらえるように、少しでも何かを残せたらいいなと思っています。選手の皆さんは、今まさに箱根駅伝に向けて頑張っているところです。選手たちが輝ける舞台をちゃんと整えられるように、私たちも1月3日まで走り抜けたいです。
一同 (拍手)




