第102回箱根駅伝(2026)BACK NUMBER

「レベルがちょっと高かった…」箱根駅伝予選会が高速レースとなった要因と、出場校の対応が必須な“想定”の見直し

posted2025/10/27 10:00

 
「レベルがちょっと高かった…」箱根駅伝予選会が高速レースとなった要因と、出場校の対応が必須な“想定”の見直し<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

集団となって走る、棟方一楽(118)、中澤真大(121)ら大東文化大学の選手たち

text by

和田悟志

和田悟志Satoshi Wada

PROFILE

photograph by

Yuki Suenaga

「大きく崩れた主力がいた以外は、ある程度予定通りのタイムでは走れたんですけどね。他のレベルがちょっと高かったですね」

 箱根駅伝予選会の結果発表後にこう漏らしたのは、8位通過した大東文化大学の真名子圭監督だ。4年連続54回目の本大会出場を決めても、その表情は曇りがちだった。

 大東大には入濵輝大(4年)、棟方一楽(3年)、中澤真大 (2年)、大濱逞真(2年)と核となる選手が複数名おり、5月の全日本大学駅伝関東地区選考会でも2位と好成績を収めていた。箱根駅伝予選会は2年ぶりだったが、2年前の第100回、3年前の第99回と2年連続して1位で本選出場を決めている。今回もトップ通過候補の一角だったが、前評判の高さとは裏腹に、レースに臨む真名子監督はいたって冷静だった。

「2週間後に全日本大学駅伝があるので、少しでもダメージを少なくしたいと思って、この通り走れば通過はできるというペース設定をしていました。1位にはこだわらず、とにかく通過すればいいと思って送り出しました」

 9月に大濱がシンスプリント(脛のケガ)になり、中澤も1週間前に後脛骨筋に痛みがあり、決して万全な状態ではないという事情もあった。

「ただ、その中でも5位以内には来てもらいたいなと思っていたので、8位という結果は悔しい。難しいですね、予選会は……」

 ハーフマラソンのU20日本最高記録保持者の棟方が終盤ペースダウンし39位にとどまったこと、さらにチーム内5番手と計算していた庄司瑞輝(3年)が1時間6分かかりチーム内最下位だったという多少の誤算はあった。だが「それ以外は設定通りに走っている」と真名子監督が言うように、チーム内10番手のタイムはほぼ設定通りの手堅いレースを見せた。

高速レースの要因

 それでも振り返れば、次点(11位)の法政大学まで約1分の差しかなかった。あとひとつ大きなミスがあれば出場圏外に弾き出されてもおかしくはなかった。結果発表でなかなか名前が呼ばれず、指揮官も選手たちも薄氷を踏む思いだったに違いない。本大会でシード権を狙える戦力を持つチームであっても、決して油断できない予選会だった。

 総括すれば、冒頭の「他のレベルがちょっと高かったですね」という真名子監督の言葉に尽きる。それほど全体的にレベルが高かった。特に通過ライン付近が例年以上だった。

 近年ロードレースの高速化が進むが、昨年の予選会は異常な蒸し暑さに見舞われたこともあり、全体的にタイムが遅かった。今回が高速レースになった要因には、暑熱対策としてスタート時刻を約1時間早めたことが挙げられる。また、前回の反省を踏まえて前半を自重するチームが多かったことも、結果として記録の水準が上がった一因だろう。立川市街地から起伏のある国営昭和記念公園にコースを移してもペースが落ちない選手が多かった。それゆえに、終盤の走りが明暗を分け、結果が発表されるまでは最終の総合順位がまったく予想できなかった。

【次ページ】 急がれる“想定”の見直し

1 2 NEXT

ページトップ