- #1
- #2
ボクシングPRESSBACK NUMBER
「負けも受け入れられる覚悟はあるよって」那須川天心が井上拓真との決戦を前に語った発言の真意「いかに相手を混乱させられるか、でしょうね」
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byShigeki Yamamoto
posted2025/11/15 11:03
井上拓真とのWBC世界バンタム級王座決定戦を前にその心境を明かした那須川天心
「チスパの試合をみて、実感できたんです。一緒にスパーリングでやってきたことはやっぱり高いレベルでやれていたんだ、と。目指す場所に向かって、そこは間違いじゃなかったんだ、と」
強い武居に対して強いメディナが上回った。自分と一緒にやってきたメディナの戴冠によって自分の進む方向性に間違いはないと心から思えた。
那須川は試合が決まってからも、ボクシング以外の活動を積極的に行なっている。
ADVERTISEMENT
過日、渋谷のMEGAドン・キホーテで一日店員を務め、レジ打ちや品出しを行なっている。普通、世界戦を控えるボクサーは集中するためにセーブしがちだが、「日常と格闘技を切り分けない」那須川の“行動規範”を見ていれば十分に理解できる。切り分けない=真剣勝負。私生活を含めた日常が闘いのリングにつながっているというのが彼の考え方だ。
「スランプは贅沢」とは
日常から視野を広げているため戦いにおいて咄嗟の判断も、アドリブも可能になる。その彼がいま力を入れている一つがTBSラジオの「かんきもラジオ」。リスナーの相談に乗るコーナーでも、真剣に応えている。あるときは「スランプの時期はどうすべきか?」との問いに「スランプは贅沢」という考え方をベースにアドバイスしていた。
「せっかく質問を投げかけてくれているんで、誠意を持って応えたいですね。スランプの話で言うと、僕が思うにそのときにスランプだなって感じると一種のあきらめになってしまう。一回休んだほうがいいとか、そういったものが普通のアドバイスなんでしょうけど、やっぱり(取り組んでいることは)やり切ったほうがいいと僕は思うんですよね。後々になって、あのときスランプだったなって思えばいいだけ。自分に甘えを持たないことも大事だとは思うんです。その人に寄り添いつつ、厳しいことを言ったほうがいいと思ったらそうします。自分の本気が伝わらないといけないので」
「負けを受け入れられる覚悟はあるよって」
那須川という人はとにかく人との交わりを好む。SNS全盛の時代、ボクシング外部からの殴り込みは生粋のボクシングファンを刺激し、「アンチ」が少なくないことも自覚している。すべてを受け入れ、多くの人を巻き込みながらより強くなろうとしている。生き方にウソがなく、何ごとも面白がっているから立ち止まることもない。

