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8年ぶり侍ジャパン復帰のオリックス・若月健矢「呼ばれないだろうなと思っていた」“山本由伸の女房役”が世界へ…飛躍を支える“捕る力”とWBCへの道
text by

米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNanae Suzuki
posted2025/11/17 11:00
侍ジャパン韓国戦に出場した若月
ベテラン投手が証言する“座り方”の安心感
ブロッキングだけでなく、“座り方”にも安心感があると言うのは、今年5月に中日からトレードで移籍し、復活を遂げた36歳の岩嵜だ。
「『ここに来てほしい』と思って構えてくれているのが伝わってくるキャッチャーと、そうでないキャッチャーがいるんですけど、オリックスは、健矢だけじゃなく、友哉も福永(奨)も、構えからそれが伝わってくる、僕が好きな座り方をしてくれる。そのあたりは、敵だった時から『投げやすそうだな』と思って見ていたんですが、実際にこっちに来たら、本当にすごく投げやすいので安心して投げています。
わかりやすく言うと、片膝をついてコースに寄って構えてくれるキャッチャーですね。ラインが見える人と見えない人がいるんですけど、そうやって構えてくれると見えやすいんです。そこは本当に(オリックスに)来た時に『あーよかったな』と思いました」
由伸快挙の瞬間も…黙々と積み上げる練習量
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投手に安心感を与える捕手になった若月の、一番の強みは体の強さだろう。プロに入って12年、捕手という負担の大きいポジションでありながら、怪我による離脱はほぼない。怪我をしないというより、怪我に強いというのか。2018年は太腿の肉離れに見舞われながらも試合に出続けていた。他にも、公にはなっていなくとも痛みを押してプレーしていたことはあるだろう。その強靭な体が豊富な練習量も支えてきた。
今季終了後の舞洲での秋季練習も、侍ジャパンの合宿に向け念を入れていた。投手練習は9時半、野手練習は10時半開始だったが、若月は投手練習の時間に合わせて準備し、ブルペンで投手の球を受けてから野手練習に合流。全体練習が終わったあとも、室内練習場で黙々と練習を続けた。ワールドシリーズ第7戦で、元相棒の山本由伸が胴上げ投手になった瞬間も、練習していて見られなかったという。
無骨に努力と経験を積み重ねてきた30歳は、日の丸を背負うにふさわしい。


