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プロ野球PRESSBACK NUMBER
進路面談で「プロを目指せ!」「この先生は何言ってるんだろう?」が現実に…ヤクルト育成ドラフト1位・小宮悠瞳と熱血先生の“育成上等”ド根性
text by

杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byTomosuke Imai
posted2025/11/14 17:01
川崎総合科学高からヤクルトに育成1位指名された小宮投手。学校史上初のドラフト指名をもたらしたのは、監督でもある遠藤先生との熱い師弟関係だった
3年生最後の体育祭では、練習時間を確保するために応援団長を辞退し、文化祭ではケガのリスクを避けるために、建設工学科の恒例となっているプロレスも断念。どれも楽しみにしていたが、すべては夢を叶えるためだ。ラゾーナで遊んでいたのも今は昔。心身ともにたくましくなってきた。
指名挨拶に訪れた青木宣親GM特別補佐から、プロとして生きていく上で大切なのは『自分と向き合うこと』、『考え方』だと聞き、すとんと腹に落ちた。遠藤監督に、京セラの創業者である稲盛和夫さんの著書から引用した同じような言葉を教わり、『人生・仕事の成果=考え方✕熱意✕能力』という哲学をずっと胸に留めてきたのだ。
「プロ野球の世界でも通じるんだな、と思いました」
千賀投手のようにはい上がる
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大きな伸びしろを買われる左腕は、高校最後の夏が終わった後も、どん欲に練習に取り組んでいる。現在は西武で活躍する今井達也のフォームを動画で毎日のようにチェックし、試行錯誤しながら投げ込む。左と右の違いはあるが、力感のない投げ方が参考になるのだという。課題である下半身の強化にも励み、先を見据えて準備を進める。プロ1年目は体作りがメイン。2年目から勝負していくつもりだ。
「野球エリートと呼ばれる選手たちには、絶対に負けたくないです。僕はもともと下からはい上がってきたタイプ。(ソフトバンクの)育成出身で、今はメジャーリーグで活躍する千賀滉大選手のようになりたいと思っています。育成からでも、僕も球界を代表する投手と肩を並べられる日が、いつか来ると思っているので。最終的には最多勝、最多奪三振のタイトルを取りたいです」
野心を隠そうとしない18歳の言葉には力がこもる。
「10月23日からヤクルトファンになった」遠藤監督は教え子の決意を聞きながら目を細めていたが、ふと先生の顔に戻る。来年1月の新人合同練習に頭から参加できるように、まずは建設工学科の課題を終わらせることを促していた。ドラフトで指名されても免除はない。ここは公立高校である。実習室で特殊な機械に触れ、勉強するのも残りわずか。卒業に向けて、学業にも精を出す。
〈全2回の2回目/はじめから読む〉


