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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「青木宣親さんがやってきた!」普通の工業系高校“初のドラフト指名”はなぜ起きた? ヤクルト育成1位左腕は「右利き用グローブで野球始めました」
text by

杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byKawasaki city high school for Science and Technology
posted2025/11/14 17:00
学校で初のNPBドラフト指名で、川崎総合科学高校は沸き返った。ヤクルトの青木GM補佐(右)の来校に、小宮悠瞳本人はもちろん、遠藤監督(左)もニッコリ
人生であの青木さんと話す機会があるなんて
「私の人生で、メジャーリーグ、ヤクルトでも活躍していた、あの青木さんと直接話す機会があるなんて、まさか思わなかったので」
時間帯はちょうど5限目の授業中だったこともあり、小宮は就職活動の一環として公欠扱いにしてもらった。6階の小会議室には、テレビでしか見たことのないレジェンドが座っている。18歳の高校生は緊張した面持ちで挨拶を済ませ、青木GM特別補佐、余田雄飛スカウトの言葉に耳を傾けた。
「青木さんからは『(肩甲骨の)可動域がすごく広い』と言っていただきました。『柔らかすぎて、ケガをする可能性もあるので、ここからしっかり体をつくっていこう』と」
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柔軟な肩甲骨は持って生まれたもの。上半身をしならせるようにして投げるフォームは独特である。右足をぽんと上げ、スリークォーターから投げ込む自慢の直球は最速143キロを計測。右打者の内角をえぐるクロスファイヤーは大きな武器だ。
高校時代は身長がぐんぐん伸びていたこともあり、筋トレにはほとんど手をつけなかった。言い換えれば、そこも伸びしろ。入学時に169cmだった身長は180cmとなり、体重は現在74kg。夏以降にようやく食が太くなり、3kgから4kg増加させた。遠藤監督はドラフト前から、体ができ上がってくれば「球速はプラス10kmくらい上がる」と話していたが、ヤクルトにはさらに高く評価されていた。
160km左腕の可能性!?
「お世辞もあるかもしれないですが、青木さんは『いまよりプラス20km上がるかもしれない』と言うんですよ」(遠藤監督)
単純計算すれば、163km。「ロマン枠」という言葉がしっくりくる。現時点で日本人左腕の最速は、西武・羽田慎之介の160km。夢は広がるばかりだ。プロ関係者の目に留まった“天然素材”は、いかにして育ってきたのだろうか——。


