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「なぜドラフト直前で進路変えた?」プロ12球団が注目、超有望ピッチャーの進路変更ウラ側…監督が伝えた“ある言葉”「恩師は菅野智之の同期だった」
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井上幸太Kota Inoue
photograph byKota Inoue
posted2025/11/13 11:02
プロ全12球団が視察に訪れた有望高校生ピッチャー。揺れた進路決断を明かした
黒田は大卒後に系列の東海大相模でコーチを務めた後、神奈川の公立校で講師を経験。講師時代に、「英数学館が若いコーチを探しているらしいけど、どうだ?」と打診したのが、東海大の先輩で東海大菅生を率いる若林弘泰監督だった。当時英数学館の監督だったのが、元中日の森廣二氏。森氏と中日で同僚だった若林監督から、同じく東海大出身の黒田の父を介するという、東海大が生んだ縁だった。
恩師は菅野智之と同期だった…
現在は、11月の推薦入試に向けて準備を進めつつ、連日グラウンドで汗を流す。黒田が藤本に重ねる姿は、大学時代の同期である菅野智之(オリオールズ)だ。
「大学に入って初めて、菅野が投げたボールを見て、1球で『なんでプロ行かなかったの?』って思いましたよ。これ、プロの球じゃないの?って。高校を卒業したばかりで、プロの球を見たこともないのにそう思えるくらい、とんでもなくすごいボール。菅野と話したら『高3の冬に頑張ったから』と。大学に向けてちょっと体を動かすんじゃなくて、同世代に差をつける、トップレベルとの差を縮める時間にしてほしい。黙々とやれるタイプなので心配はしてませんが、突き詰めてやってほしいですね」
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プロ志望届提出の締め切りは10月9日。その日を迎えても、藤本に特別な感情は芽生えなかった。もっと言えば、「いつが締め切りかも知らなかった」とのことだ。一切の情念が湧かなかったのは、方針転換に100パーセント納得できているからだろう。
桜が咲くころ、自分が袖を通した縦じまに身を包んだ教え子の快速球に、周囲はこう漏らすはずだ。「なんでプロに行かなかったの?」と。

