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「昌磨さんの言葉が響きました」佐藤駿を180度変えた宇野昌磨のアドバイス…自己ベストでGPファイナル進出「やってやったぞ、という感じで」

posted2025/11/12 17:21

 
「昌磨さんの言葉が響きました」佐藤駿を180度変えた宇野昌磨のアドバイス…自己ベストでGPファイナル進出「やってやったぞ、という感じで」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

NHK杯フリーでは自己ベストを更新してトップのスコアを出し、総合で2位となった佐藤駿

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野口美惠

野口美惠Yoshie Noguchi

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Asami Enomoto

 佐藤駿にとって、GPファイナルの進出がかかったフィギュアスケートのNHK杯(大阪、11月7~9日)。フリー1位、自己ベスト更新の189.04点が表示されると、ホッとした様子で、フーっと息を吐いた。すると隣にいた日下匡力コーチが「やったー!すごい!」と叫んで立ち上がる。カメラマンがレンズを向けると、佐藤が小さく胸元でピースを作り、日下コーチは両手で大きくガッツポーズ。それを観た会場のファンから、ドッと笑いが起きた。もはや名物ともなってきた“佐藤と日下コーチの温度差リアクション”。それは、佐藤が破格の躍進を続けていることの現れでもある。今季、佐藤に起きた変化とは。

ターニングポイントは昨年の全日本選手権

 スケート人生を大きく変えるターニングポイントとなったのは、昨年12月の全日本選手権だった。優勝を狙ったものの、極度の緊張からミスを連発し、総合7位に。演技後には過呼吸になって倒れ、メンタル面の弱さを痛感した。

 3月の世界選手権に向けて、もう一度自信を取り戻したいーー。そんな佐藤は、試合への臨み方を振り返った。

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「うまくいく時のパターンは、優勝やノーミスを意識していない時。優勝したい気持ちはあるけれど、それを考えずに試合に臨むのが良いというのは分かっている。でも実際に試合になると『優勝しなきゃ』『失敗が怖い』と思ってしまう」

 もともと強気なタイプであれば「勝つぞ」と考えることでアグレッシブに挑むことが出来る。しかし強気どころか、自分の感情をあまり表に出さない佐藤の場合、どんな心の持ち方で挑むと良いのか。模索するうちに、他の選手の成功例に思い当たった。宇野昌磨である。

「(宇野)昌磨さんの選手時代のインタビューを聞いていると『優勝したい』と宣言しないところとかが自分と似ている。どういうメンタルで行けば良い演技が出来るのか聞いてみたい」

「昌磨さんの言葉が響ました」

 すると世界選手権前に宇野に会う機会があった。宇野も「駿の考え方は僕に似ているところがある。あれだけ高いレベルの練習をしていても試合になると出し切れないということを、自分も長年経験してきたから良く分かる」と共感。練習方法や試合のメンタルについて、長いメールに託して送った。

【次ページ】 宇野のアドバイスをもとに練習計画

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