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「昌磨さんの言葉が響きました」佐藤駿を180度変えた宇野昌磨のアドバイス…自己ベストでGPファイナル進出「やってやったぞ、という感じで」
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野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2025/11/12 17:21
NHK杯フリーでは自己ベストを更新してトップのスコアを出し、総合で2位となった佐藤駿
その内容は「詳細は秘密」(宇野)だが、「失敗には理由がある。失敗を成長に変えようと思うと、失敗が怖くなくなる」といった考え方だった。
「昌磨さんの言葉が響きました。失敗の理由を考えるようになって、ジャンプの質をさらに上げる練習が出来ました。そして試合への向き合い方も180度変わりました」(佐藤)
世界選手権では、全日本とは別人のように落ち着き、ショート、フリーともに4回転ルッツを成功。初出場で6位と、手応えをつかんだ。
宇野のアドバイスをもとに練習計画
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ところが、更なる飛躍を目指した今年の6月、アイスショーで右足首を痛めてしまった。全治2カ月の骨挫傷。重要な五輪シーズンに、痛恨の出遅れといえるケガである。しかし佐藤は焦らず、宇野からのアドバイスを思い出して練習計画を立てた。それは「時間の使い方」だった。
日下コーチはこう説明する。
「宇野さんからいただいたアドバイスをもとに、駿のやり方も合体させ、話し合いながら練習してきました。まず、だらだら長く練習はしない。この時間はショートの練習、この時間はスピン、ジャンプ、フリーの前半、後半という感じで分けて練習をしてきました。ジャンプは回数をたくさん跳ばずに、ケガを悪化させないような練習をする、ということです」
練習量は減っても、質を上げることで自信を積み重ねた佐藤。NHK杯までの日々をこう振り返った。
「世界選手権の前から、練習の仕方や、質が大きく変わったと思います。(宇野からのアドバイスで)練習していても、自分のなかで納得いかない失敗が減りました。そのおかげで、すごく意味のある練習を毎日できていると思います」
迎えた11月7日、NHK杯のショート。佐藤は演技冒頭の4回転ルッツを降り、続く4回転トウループ、トリプルアクセルをクリーンに成功させた。96.67点で、鍵山優真に僅差の2位につける。
「始まる前から緊張せず、練習のまま出し切れたと思います。4回転ルッツは回転がちょっとq(4分の1回転不足)かなと思ったんですけれど、それでも着氷させられました。それにルッツ以外は、本当に質の高いジャンプを練習で何回もやってきていたので、それが出せたと思います」
「無理しない練習を心がけました」
フリーの朝、公式練習では曲かけの途中で演技をやめるシーンがあった。リンクサイドにいる日下コーチと会話すると、最後のステップだけ通して演技を締める。
「公式練習では、無理しない練習を心がけました。前は、自分が納得行くまで何本も跳ぶという感じでしたが、できるだけ体力を残して本番に備えるということを考えられるようになりました」
あえて2回転ルッツを跳んで感覚を確かめるなど、ケガの部位を温存しながら過ごした佐藤。夕方の本番には、自信に満ちた表情で現れた。


