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14年前の東京ドームと同じ光景が…棚橋弘至の引退試合は“AEWのオカダ・カズチカ”「よかったら僕がやりますよ」中邑真輔ではなくても“納得できる”理由
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原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2025/11/11 17:00
棚橋弘至の1.4引退試合の相手はオカダ・カズチカ。14年前に東京ドームで見た光景が安城市のリングで再現された。11月8日、東祥アリーナ安城
棚橋弘至「あそこから始まった物語ですから」
棚橋は最後の相手を受けてくれたオカダに「ありがとう」と感謝した。
「“レインメーカー・ショック”、まあ古い話になりますけどね。あそこから始まった物語ですから。なかなかこう引退試合で勝って辞めていくっていう選手はいない、少ない。けど、ボクは一人知ってますんで」
棚橋が口にしたその一人は1998年4月に引退したアントニオ猪木だ。棚橋にプロレスラーを続けさせてくれた恩人だ。
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「全力を出して、出し切れる相手なんで。“まだまだできるぞ”って思われて辞めるのか、“棚橋もうボロボロだし、しょうがないな”って思われて辞めるのか。後者にならないように最高のコンディションで臨みます」
二人のシングルでの戦績は棚橋の5勝9敗3分。棚橋が負け越している。だが、東京ドームに限れば2013、2015、2016年とメインイベントで戦い、棚橋の2勝1敗だ。新日本プロレスが人気を回復していった時期だ。
オカダが棚橋との試合を語った。
「自分の中でのベストバウトというか、絶対一番忘れられない試合っていうのは、棚橋さんに東京ドームで勝った試合なので、それを上回れるように、しっかりといい試合をしてですね、東京ドームを楽しみたいなと。それだけお客さんも来てくれると思いますし。いろんな意味でみなさんを泣かせたいなと。あの引退が寂しいじゃなく“もうオカダ、やめてあげてよ”っていうぐらい、ボコボコにしたいなと思います」
オカダはAEWマットでドン・キャリス・ファミリーの一員として悪の世界に身を置き、AEWのシングル王座も保持している。会見の入場ポーズでは中指を立てて笑みを浮かべるお決まりのシーンを披露した。
「棚橋さん、これからは“逸材”にかわって“レインメーカー”が新日本プロレスを引っ張って行きますんで、お疲れ様でした。オレは新日本プロレスにカネの雨を降らせるために帰ってきたんだから」(オカダ)
あの懐かしい“出会い”から14年が過ぎようとしている。
棚橋弘至の引退。満員の東京ドームでそれを見てみたいと思う。


