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14年前の東京ドームと同じ光景が…棚橋弘至の引退試合は“AEWのオカダ・カズチカ”「よかったら僕がやりますよ」中邑真輔ではなくても“納得できる”理由
posted2025/11/11 17:00
棚橋弘至の1.4引退試合の相手はオカダ・カズチカ。14年前に東京ドームで見た光景が安城市のリングで再現された。11月8日、東祥アリーナ安城
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原悦生Essei Hara
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Essei Hara
「もう少し待ってほしい」と延び延びになっていた新日本プロレスの棚橋弘至引退試合(1月4日、東京ドーム)の相手がAEWのオカダ・カズチカに決まって、11月9日、正式に発表された。
安城市で見た、14年前の東京ドームと同じ光景
前日の安城大会で、棚橋がメインイベントのYuto-Ice戦を終えて「愛してまーす!」と叫んだ時、コインの音が聞こえて「RAINMAKER」の曲が流れた。
それが何を意味しているかは、会場のファンにはわかった。ファンの視線は左手のビジョンに注がれた。いかに安城市がオカダの出身地とはいえ、実際にオカダが姿を見せるとは思っていなかっただろう。右の入場口からオカダが現れた。それは驚きで、会場には歓喜とどよめきが交錯していた。
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黒のシャツとパンツで外道を伴ってリングに上がったオカダはマイクを握った。
「棚橋さん、引退おめでとうございます。そして、お疲れ様でした。2026年1月4日、よかったらボクがやりますよ。それまで疲れんじゃねえぞ、コノヤロー!」
二人は近づくと、棚橋が両手を上げ、オカダも両手を広げレインメーカー・ポーズを取った。2012年1月4日に東京ドームで見た光景と同じだった。11度目のIWGPヘビー級王座防衛に成功した棚橋にオカダが挑戦を表明したときだ。
「IWGPは遠いぞ」と棚橋に言われたオカダだったが、同年2月12日には大阪でのいわゆる“レインメーカー・ショック”で棚橋からIWGP王座を奪った。
「あとは、ボク自身の問題ですね。もう精いっぱいやってきて、悔いはないか? って言われたら、悔いはありますよ。その部分も、残り2カ月で、全部チャラにして。むしろ、プラスにして、いい思い出だけにしますんで。そうしないと、辞められなくなっちゃうんでね。やっぱりボクのプロレス人生の中で、深く関わり合いをもったレスラーってのは、数えるほどしかいないから。その中でもレインメーカー・ショックから始まってね。あの時はショックだったけどもね。あそこからまた新日本プロレスが上昇気流に乗り始めたっていうのはあるから。まあでも、本当に、ボク自身の引退試合なんで」
棚橋の「ボク自身の引退試合」という言葉に筆者はある思いを抱いた。引退試合の相手を誰にするか――すべてが自由になるなら中邑真輔だろう。それは多くの棚橋ファンが納得し、棚橋自身も素直にうなずけるものだ。




