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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「41歳シャーザーは水6本飲む」大躍進ブルージェイズを支えた日本人栄養士が語る…ドジャースと激闘、世界一に迫った「家族のようなチーム」の正体
text by

杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2025/11/10 11:45
ワールドシリーズでドジャースと激戦を繰り広げたブルージェイズで管理栄養士を務めた讃井友香さん
「“ファミリー感”を作っていたリーダーを挙げるとすれば、一番はやっぱりジョージ・スプリンガー(36歳、外野手)でしたね。ジョージは場を明るくするのがすごく上手で、みんなが溶け込みやすい雰囲気を作ってくれました。もう一人はマックス。彼はワールドシリーズを何度も経験しているので、“勝つ意味”を知っている。『勝つためには何でもする』という意識をチーム全体に浸透させてくれたと思います」
投手力が不安定になることもあったブルージェイズだったが、9月に新人トレイ・イエサベージがメジャー昇格したことが大きなブーストになった。ルーキー右腕はワールドシリーズ第1戦の先発を任され、第5戦では12奪三振のシリーズ新人記録を樹立。躍り出たニュースターに対する嫉妬ややっかみはチーム内に存在しなかった。この22歳のルーキーがチームに馴染みやすいように、当初から全力でサポートしたのが41歳のシャーザーをはじめとするブルージェイズの選手たちだった。
「トレイがチームに来たとき、先発投手陣みんなが彼を気遣って、積極的に話しかけていたのが印象的でした。マックスもその輪の中にいたんです。『この人たちは本当にチームのためなら何でもするんだな』と感じた光景でしたね」
シュナイダー監督に反抗したシャーザー
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メジャーでのプレー経験がないまま2019年以降、ブルージェイズの指揮を取り続けてきたジョン・シュナイダー監督の存在も大きかったのだろう。明るく、気取らず、自分自身を笑い飛ばすことも厭わない45歳の指揮官はメディアにも大人気。日常的に接する讃井さんは、「(監督は)普段もあのままです。すごく陽気なキャラで、家族をすごく大切にします。選手とも毎日コミュニケーションを取って、スタッフともいろいろ話し合ってみたいな人です」とシュナイダー監督が“素顔のまま”であると証言する。
マリナーズとのリーグ優勝決定シリーズ第4戦中、象徴的なシーンがあった。5回途中、交代を告げるためにマウンドに向かったシュナイダー監督にシャーザーが鬼の形相で続投を志願。監督の采配に反抗したとみなされないこの件は通常なら大ごとになりかねないところだが、二人の関係にそんな心配は無用だった。
「マックスは毎日、シュナイダー監督とかなり話しているみたいです。仲がいいですし、それだけのコミュニケーションをとっているからこそ、2人の間には信頼が存在するんだと思います」
讃井さんのそんな言葉通り、シュナイダー監督もメジャー通算221勝の“レジェンド”をリスペクトし、フレキシブルに起用する柔軟性を持っていた。トップの人間たちの間に適度な風通しの良さがあったからこそ、チーム全体が良好に機能したに違いない。
このようにシュナイダー監督、スプリンガー、シャーザーといった重鎮たちが引っ張ったブルージェイズ。昨季は地区最下位に終わり、開幕前はまったくの無印だったチームは、いつしかまるでトーナメントを勝ち進む学生チームのようなケミストリーを帯びる。一体感が快進撃の原動力となり、同時にそのまとまりがゆえに多くの人間に愛されるチームとして飛翔していったのだろう。〈つづき→後編〉



