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野球善哉BACK NUMBER
日本シリーズ「とにかく今日決める」ソフトバンク・小久保裕紀監督が短期決戦で積極姿勢を出せたワケは“反省”「去年の負けがあったから」
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氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/11/08 18:01
日本シリーズ、勝敗を分けたポイントを両チームの監督の視点から読み解く。小久保監督の積極采配には昨年の“反省”があった
6回に早くも切り札・近藤を起用
本来なら4番を打つはずのヒットメーカーも、怪我の影響で、DHのないセ・リーグ開催ではベンチスタートとなっていた。いわば、取っておきのジョーカーを、まだ終盤にひとヤマ来るかもしれないというタイミングで起用したのだ。
「スコアリングポジションに行けば近藤と決めていた」
小久保監督はそう語ったそうだが、この仕掛けの早い策は、昨年ののんびりした采配では考えられなかった。しかも、近藤が代打で打席に向かう前、ネクストサークルには右打者の正木智也を準備させていたというのも心憎かった。近藤は右翼前適時打でしっかりと結果を残し、貴重な追加点をもたらしたのだった。8回に阪神の追撃を受けたものの、1点差で逃げ切ったソフトバンクは王手をかけた。
首位打者にまで代打を送る
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そして、日本一を決めた第5戦の采配もまた見事だった。
試合は阪神が2回裏に坂本誠志郎の左翼前適時打で1点を先制。5回裏にも佐藤輝明の中前適時打で1点を追加。先発した大竹耕太郎の好投もあり、ソフトバンクは劣勢を強いられた。
そんな中で7回表、チャンスを掴んだ。柳町が中前安打で出塁。2アウトを取られるも、6番の野村勇が四球でつなぐ。つづく7番は牧原大成だったが、ここでなんと近藤を代打で送ったのだ。まだ2点ビハインド。パ・リーグ首位打者にまで代打を送る姿勢に、並々ならぬ決意を感じたものだった。
近藤は8球粘った末に見逃し三振に倒れたものの、ドラマはその後に待っていた。8回表、先頭の嶺井博希が右翼前安打で出塁すると、1死から1番の柳田悠岐が左翼スタンドに起死回生の同点本塁打を放ったのだ。相手の絶対的リリーバー・石井大智を粉砕する豪快な一発だった。その後、広報から番記者に送られてきたホームラン談話には納得するものがあった。柳田はこうコメントしていた。

