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「ダビデとゴリアテ? ヘビー級王者同士の戦いだった」ドジャースに敗れたブルージェイズ監督が明かした本音…「きっとずっと思い返す」1シーンとは?
text by

一野洋Hiroshi Ichino
photograph byJIJI PRESS
posted2025/11/07 17:02
第7戦までもつれたワールドシリーズでドジャースに敗れたブルージェイズのジョン・シュナイダー監督
「圧倒して勝てるチャンスはあったが、できなかった。それが野球だ。あの満塁での打席の一つ一つを、きっとずっと思い返すだろう」
指揮官がまず振り返ったのは、第7戦の同点で迎えた9回裏1死満塁の絶好機だ。
一本出れば32年ぶりワールドシリーズ制覇のチャンスだったが、山本由伸の前に一本がでなかった。そしてその、あと一本、あと一球の積み重ねが最終盤での差となった。
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第7戦のロッカールームで、シュナイダー監督は選手たちに「サンキュー」を10回は繰り返したという。
「“ありがとう”って言ったよ。たぶん10回くらい。全員が僕の心の中に居場所を持ち続けるだろう」
その言葉の裏には勝機を創った誇りと、わずかに届かなかった悔しさが同居していた。
大谷翔平「4打席連続敬遠」の衝撃
第7戦の1シーンと並ぶようにシュナイダー監督の記憶に刻まれているのが第3戦の決断だったのではないだろうか。
実に18イニング、6時間39分の戦い……まるでひとつのシーズンを凝縮したような超長丁場の試合。ドジャースの大谷翔平が2発を含む4長打で試合を引っ張ると、トロントは“バットを大谷の手から取り上げる”決断へ舵を切った。
「彼は素晴らしい試合をした。偉大な選手だ。ただ、あそこまで来たらもうバットを持たせないほうがいい」
この夜、大谷は9度の出塁。ブルージェイズは、手の付けられないバッターに対して4打席連続の申告敬遠も辞さなかった。極端な選択は、極端な現象に対する合理的反応だったが、勝利の十分条件ではなかった。
歩かせた後にはムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマンという火種が控えている。
敬遠の副作用、つまり走者を背負う重力が、延長のどこかでじわじわ効いた。第3戦はフリーマンのサヨナラ本塁打で落とし、シリーズは1勝2敗のビハインドへ。「勝てたのに、勝てなかった」象徴的な夜だった。

