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「えっ、投げるの?」記者もざわついたドジャース山本由伸“伝説のリリーフ登板”真相「すべては第3戦から始まったんだ」敏腕フリードマンの“誤算”とは
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杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGregory Shamus/Getty Images
posted2025/11/06 17:00
ゲームセットを迎えた瞬間、安堵の表情を浮かべた山本由伸。最後のマウンドを託された重圧を物語るシーンだった
第7戦が近づくにつれて“登板可能”という方向に傾いていたフリードマン編成本部長だが、寸前までまだ半信半疑に近かったことはこんな言葉からも窺い知れる。
「“もう一度治療を受けたら本当に身体がいい感じだった。キャッチボールをしたけどボールの出もいい”と言ってきた。“じゃあ戦力になるな”とは思ったけど、どんな形で、どれくらいのイニングを投げられるのかまではわからなかった」
「すべては第3戦から始まっていた」
当の山本ですら「ブルペンで(肩を)つくりはじめたときはまだ体調的に投げられる確信がなかった」と話しているくらいなのだから、周囲にも答えが見出しづらかったのは当然。そんな状態でワールドシリーズの土壇場に起用、しかも1本でもヒットが出れば敗退という状況に送り込むのはとてつもないギャンブルにも思える。
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ただ、最終的に、それでも今秋絶好調だった山本こそがブルペンに残っている他のリリーフ投手たちよりも優れたオプションだとドジャース首脳陣には信じられた。驚くべきことに、その根拠はシリーズ第3戦にあったのだという。延長18回にもつれ込み、山本が中1日でのリリーフ登板を敢行する寸前までいった伝説的ゲームである。フリードマン編成本部長はその思考のプロセスをこう説明する。
「すべては第3戦から始まっていた。延長戦で山本が“自分が行く”と志願してきた。(18回にサヨナラ勝ちしたために登板は実現しなかったが)試合後にジョシュ・バード(ブルペンコーチ)と話したら、山本のウォームアップは信じられないほど良かったと言っていた。あれで今日への自信が少しついたんだ」
完投勝利から中1日でリリーフ登板に備えた際も、山本はブルペンで力強い球を投げることができていた。疲労がさらに蓄積する第7戦の状態をその時と単純に比較はできないとしても、心強い要素にはなる。本人とそのサポーティングスタッフがいけると判断するのであれば、起用する側も自信を持って送り出せる。

