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「リング上に肉が焼ける匂いが立ち込めて…」デビュー40周年の“暴走女王”が語る「走馬灯を見た」瞬間…「もう勝敗なんてどうでもよかった」
text by

“Show”大谷泰顕“Show”Yasuyuki Ohtani
photograph bySankei Shimbun
posted2025/11/08 11:02
井上京子(左)とのデスマッチで「走馬灯を見た」という堀田祐美子(右)。厳しいレスラー人生の中ではさまざまな大事件があった
ともあれ、試合は終わった。公式記録では12分16秒、体固めで井上が勝利した。
「正直に言えば、もうそんなことはどうでも良かった。こんなことを言ったら元も子もないかもしれないけれど、あの試合に関してはそれが本音。細かいことはよく覚えていないけど、京子の火傷は水ぶくれになっていたし、とにかく試合が終わった瞬間に私は京子と一緒に抱き合って泣いちゃって」
取り壊し前の体育館…通常の3倍の火薬が!
実は試合後に発覚したことがあった。堀田と井上が飛び込んだ電流爆破の有刺鉄線には、通常の3倍の量の火薬が入れられていたという。
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そもそも普通の体育館、なぜそんなに大量の火薬を入れて電流爆破を実行できたのか。それは老朽化のため、このイベントを最後に川崎市体育館は58年の歴史に幕を閉じることが決まっていたからだった。「もう取り壊すからご自由に使ってください」というわけだ。
「そのおかげで私と京子は、あれだけの威力抜群の電流爆破のなかに入ることになった。現在は、カルッツかわさきとして生まれ変わっているけど、私にとってあの会場が生涯忘れられない場所になっていることだけは間違いないですよ」
そんな堀田は今年、デビュー40周年を迎えた。
多くのレジェンドレスラーたちがとうにマットを去った中で、未だ堀田は現役を貫く。その間、さまざまな形で生と死の狭間を生き抜いてきた。
プロレスラーはリングという四角いジャングルにおいて、常に “超人追求”を怠らない。プロレスラーを鋼の肉体と精神を持つ超人と見るからこそ、ファンはその一挙手一投足に歓声を上げ、悲鳴を上げるのだ。だからこそ――堀田の“超人追求”はこれから先も続いて行く。

