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「リング上に肉が焼ける匂いが立ち込めて…」デビュー40周年の“暴走女王”が語る「走馬灯を見た」瞬間…「もう勝敗なんてどうでもよかった」 

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“Show”大谷泰顕

“Show”大谷泰顕“Show”Yasuyuki Ohtani

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photograph bySankei Shimbun

posted2025/11/08 11:02

「リング上に肉が焼ける匂いが立ち込めて…」デビュー40周年の“暴走女王”が語る「走馬灯を見た」瞬間…「もう勝敗なんてどうでもよかった」<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

井上京子(左)とのデスマッチで「走馬灯を見た」という堀田祐美子(右)。厳しいレスラー人生の中ではさまざまな大事件があった

 試合をしながら対戦相手の心配をしている――もはやそれは“勝負”でもなんでもない、と堀田は考えていた。もちろん、堀田も火傷を負っていた。だが、そんなことを言ってられる状況ではなく、井上の「熱いッ!」という絶叫は一向に止まる気配がなかった。

「しょうがないから外に出そうと思って、京子を連れてリングの外へ出て。そしたら今度は京子の口調が『熱い』から『痛い』に変わって。

 そんな京子の様子を見ていたら、こっちはもう怖くなっちゃって。いつのまにか涙が出てきた。もちろん京子も泣いているし、いったいどうすればいいのかまったくわからない」

パニック状態の堀田…目の前に現れた「走馬灯」

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 半ばパニック状態に陥っていた堀田。するとその目の前に、走馬灯が現れたのだという。

 興味深いのはその際、堀田の脳裏には中島みゆきが歌う『世情』が流れ始め、ドラマの中の映像がスローモーションで巡っていたことだ。この歌は1981年に放送された『3年B組 金八先生』の番組内で使われ、世間的にも非常にインパクトを残した歌だった。

「なんであの切羽詰まった状況で、脳裏にあの歌が聞こえ、ドラマの映像が巡ったのか。それはまったくわからない(笑)。本当に不思議な体験でした。とはいえリングに戻ったら、今度はあの爆破を私が受けなければいけない。もう京子を爆破に追い込むなんてできない。次は私が行くしかない」

 試合に勝つためではなく、試合を終わらせるために飛び込む。「なぜ私はこんなところにいるんだろう……?」と堀田は思った。

 結局、合計6回の爆破音が会場中に鳴り響き、堀田はそのうち3回の爆破を受けた。それを決着後に聞かされて堀田は「私、3回も爆破を受けたんだ……」と天を仰いだという。

【次ページ】 取り壊し前の体育館…通常の3倍の火薬が!

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