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「リング上に肉が焼ける匂いが立ち込めて…」デビュー40周年の“暴走女王”が語る「走馬灯を見た」瞬間…「もう勝敗なんてどうでもよかった」
text by

“Show”大谷泰顕“Show”Yasuyuki Ohtani
photograph bySankei Shimbun
posted2025/11/08 11:02
井上京子(左)とのデスマッチで「走馬灯を見た」という堀田祐美子(右)。厳しいレスラー人生の中ではさまざまな大事件があった
女子選手としての電流爆破デスマッチは、1997年に横浜アリーナで行われた、工藤めぐみの引退試合以来、実に17年ぶりのことだった。
「もちろん私は電流爆破のリングに入るのは初めてだから、とりあえず凶器になるような椅子だけは手に持って。とにかく爆破を受けないようにしないと大怪我を負ってしまう。まずは爆破の威力を確かめたい。そう思いながら、椅子を京子に向かってぶつけようとしたんです」
ドカーン!…とんでもない音と衝撃
井上がその椅子をとっさにかわしたため、そのまま椅子は爆破装置に当たった。すると「ドカーン!」というとんでもない音と衝撃が会場中に響き渡ったのだ。
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その瞬間、堀田は「無理、無理、無理!」と心底思ったという。
「もうその段階で耳はキーンとなっているし、リングの周辺は煙でモワーンとなっている。『これ、映像で見ているのと全然違う』と思って。リングに上がってなお、そんなことを考えているなんて、私のプロレスラー人生では初めてだったし、あり得なかった。
本当に、火の中にそのまま飛び込んでいくようなもので。私はいつも試合に出る時、ジェルで髪型を整えてリング上に向かうんですけど、この試合の時は1発目の爆風でいつのまにか髪の毛が大きく立ち上がってしまうくらいだったので」
そんな場面を目の当たりにすれば、もちろん誰も爆破を受けたいなどと思わない。当然、その場は必死の押し合いとなった。結局、堀田は井上を押し切り、井上が爆破の犠牲者になった。
「熱いッ!」
その時、堀田は瞬間的に口走った。
「水ッ!」
堀田は思わず対戦相手のはずの井上の身体を心配したのだ。
「京子のコスチュームはタンクトップのような、腕や背中が出ている形状のもの。京子の背中の部分に目をやると、燃えて煙が立って、リング上には肉が焼けるような匂いが立ち込めていた」
思わず堀田は井上に近寄ると、コスチュームについた火を消していた。

