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ドジャース山本由伸「ウエイトなしで体重4kg増」ワールドシリーズMVPのウラに“米2年目の進化”…ロバーツ監督の衝撃起用に応えた肉体の秘密
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田中大貴Daiki Tanaka
photograph byDaniel Shirey/MLB Photos via Getty Images
posted2025/11/07 17:00
山本由伸を強く抱きしめたロバーツ監督
「思っていた以上に投げてしまいました。フォーム、球質の確認をしていたらこんなにも投げていた(笑)」
口調は軽やかだった。時期的には疲れを考慮し、球数を減らしてもいいはずだが、むしろ増やして貪欲に精密さを追い求めていた。
「右バッターへの外真っすぐは少しでも中に入ったり、浮いたりすると危険なボールになってしまいます。真っすぐの回転軸が真横ではなく、右下がりの斜めになったら(スタンドに)持っていかれます」
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日本球界での最終年、2023年は23試合に登板して被本塁打はキャリア最少の2本のみだった。しかし、メジャー初年度の24年は18試合に登板して被本塁打は7本。今季も21試合(7月終了時点)に登板して10本と、日本では無敵を誇った彼でさえ、甘いボールはフェンスオーバーされ、失点に繋がる。
いかに芯を外し、打者のタイミングを外すピッチングができるか。そのためにどのボールを軸に使い、組み立てていくか。
「僕はパワーピッチャーではない。かわしていくスタイルです」
本人は淀みなく、さらりと自分のことを評した。
「プロ1年目から駆け引きが巧みだった」
現在、テレビ局のドジャース担当レポーターとして現地で取材を続ける鈴木優氏は、かつてオリックスの投手として2歳下の山本と5年間をチームメイトとして過ごした。山本のことをプロ入りしたときから間近で見てきた鈴木氏も、「由伸はパワーピッチャーではない」と話す。
「今考えると、フォームのタイミングを変えたり、投球間隔を変えたり、打者との駆け引きはプロ1年目から非常に巧みでした。由伸はもちろんスピードボールも持っていますが、データを見ても飛びぬけて数値が良いわけではありません。彼の生命線はやはりコントロール。そして多彩な変化球が武器です」

