山本由伸ほど、試合前の練習で異彩を放つメジャーリーガーはいない。
前半戦の山場となる6月の後半、山本はアメリカ西海岸の強い日差しを浴びながら颯爽とブルペンへと向かっていた。登板2日前の投球練習。すでに14試合に登板し、6勝をマーク。過密日程で投手陣に故障者が続出する中、開幕から唯一、ドジャースのローテーションを守ってきた。
山本はプレート板を踏む右足の角度、位置をミリ単位で確認しながら1球1球を投じていた。さらに前に踏み出す左足を着く位置をチェックし、左足首、左ひざの角度まで把握しようとしていた。その左足を軸に生み出される腕の振りは鞭のようだ。そして指先からボールを離すリリースの位置を確認する。この作業を専属トレーナー、ピッチングコーチ、アナリストらと徹底的にチェックしている姿があった。寸分の狂いなく投じられたフォーシームは右バッターの外角低めいっぱいに突き刺さる。まさに精密機械。同じシーンを巻き戻して何度も見ているかのような錯覚に陥るほどの再現性の高さだ。1球目と最後に投じるボールのフォームを重ね合わせても、数センチと変わらないだろう。
「フォーム、球質の確認をしていたらこんなにも投げていた(笑)」
この日はブルペンで20球を投じる予定だったが、気が付けば予定を大きく超えて40球になっていた。
「思っていた以上に投げてしまいました。フォーム、球質の確認をしていたらこんなにも投げていた(笑)」
口調は軽やかだった。時期的には疲れを考慮し、球数を減らしてもいいはずだが、むしろ増やして貪欲に精密さを追い求めていた。
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