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「M-1と決定的に違うのは…」“元は芸人出身”異端の落語家が振り返る“落語界のM-1”決勝戦の全内幕…「熱量が結果につながるのは、自明の理」
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生島淳Jun Ikushima
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2025/11/06 11:05
お笑い芸人から落語家に転身し、異例の速さで二ツ目に昇進した立川吉笑。出世の大一番となったNHK新人落語大賞の内幕を振り返る
「どうしてもインパクト勝負だと新作落語に分があります。でもやっぱり伝統芸能である落語は、古典落語があってこそだとも思っています。年齢を重ねると古典での味わいや説得力が増してどんどん落語が魅力的になっていくと思いますが、若いうちはどうしても奇抜な新作の方が評価されるケースも多い。
そんな中、この数年、一花さんとは色々な現場で切磋琢磨してきましたが、熱量を持って古典を練り上げていて、凄いなぁと思っていました。古典派の若手が目先の笑いや評価に引っ張られすぎないように、古典をフックアップするような仕組み、たとえばコンクールでも古典と新作の部門を分けたりだとか、そうしたことも考える必要はあるのかなと思います」
今年6月、ついに真打に昇進
吉笑は、2025年6月1日に真打に昇進し、6月24日から7月3日まで、座・高円寺で「立川吉笑 真打昇進披露興行 in 高円寺」を10日間にわたって行った。
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真打となった吉笑は今、41歳。NHK新人落語大賞を受賞したことで、人生、仕事にも影響はあったという。
「M-1みたいに人生は変わらないかもしれませんけど、自分の場合はめちゃくちゃ大きくて、大賞をきっかけにしていろいろな高座に呼んでいただけるようになりました」
そう語ると、冗談めかしてこんなことも付け加えてくれた。
「あとは……高座での“説得力”が増した気がします。情けない話ですが、自分では面白いと思って披露する新作落語で、いまだにスベることも度々あります。面白い古典がたくさんあるのに、それをやらずにわざわざ新しく自分でネタを作っておいて、その上でスベると、本当にいたたまれない気持ちになります。
でも近頃は『“あの”NHK新人落語大賞の受賞者だよな』ということで、面白いと感じなかったとしても、お客様が『自分の方が悪いのかな?』と思いこんでくれるようになった気がします(笑)」

