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「なぜそれを落語でやるの?」が出発点…“偏差値70超の進学校→国立大の数学科入学”異端の落語家が「落語界のM-1」で勝つ“最強のネタ”を作るまで

posted2025/11/06 11:04

 
「なぜそれを落語でやるの?」が出発点…“偏差値70超の進学校→国立大の数学科入学”異端の落語家が「落語界のM-1」で勝つ“最強のネタ”を作るまで<Number Web> photograph by Atsushi Hashimoto

京都の進学校→国立大の数学科という異色の経歴を持つ落語家の立川吉笑。NHK新人落語大賞という大舞台で、勝負ネタに選んだのは?

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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Atsushi Hashimoto

 落語といえば、言わずと知れた日本の伝統芸能である。座布団ひとつでお客を噺に引き込み、その独自の世界観で魅了する。一方で、そんな伝統の顕現のようなジャンルにも「競技」の世界は存在する。中でも若手落語家の登竜門とされるのがNHK新人落語大賞だ。

 今から3年前の2022年、その大賞に輝いたのが立川吉笑だった。熱を見せないことこそが“粋”とされる価値観の中で、吉笑はあえて戦略的に「競技落語」での冠を獲りに行った。そのウラにあった緻密な戦略と、圧倒的熱量のワケとは――?《NumberWebノンフィクション全3回の2回目/つづきを読む》

 2022年のNHK新人落語大賞を獲るために、立川吉笑が選んだネタが「ぷるぷる」だった。

「ぷるぷる」は唇に松脂がついてしまい、唇がぷるぷるした状態でしか話せない粗忽者と、隠居の会話で話が進んでいく新作落語だ。古典の世界観で話は進むが実は新作という、いわゆる“擬古典”と呼ばれるジャンルである。

大学は数学科に入学…“理論派落語家”の新作

 もともと吉笑は理論派の落語家だ。東大・京大にも多くの合格者を出す京都で有数の進学校である堀川高校出身。大学は国立の京都教育大学の数学科に入学している。

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 大学を中退後はコントを中心としたお笑い芸人として活躍していたが、26歳で立川談笑に入門した。吉笑はコントからスタートした新作派でありながら、設定を現代ではなく、「ぷるぷる」のように古典の世界に設定することが多いのが興味深いところだ。

「僕の場合、言ってしまえば消去法で落語にたどり着いているんです。最初は漫才から始まってダメで、そこからラーメンズさんのようなストーリー性の高いコントに取り組んだけど、それも難しかった。お笑いライブも出てはいましたけど、自分は押し出しが弱くて。エンディングとかで、芸人たちがみんな舞台に出ていくじゃないですか。

 当時だと、ロッチさんとか、ザブングルさんもいたかな。そういう中で前に出る圧力が弱かったんです。そんな時に落語に出会い、これは自分に合っている芸能だと感じました」

【次ページ】 「競技落語」にある時間制限という難しさ

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