- #1
- #2
メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「ドジャースナインは“開き直らなかった”」ワールドシリーズの勝因をNHK解説者が読む「大谷翔平の申告敬遠を初めて得点につなげた場面から…」
text by

小早川毅彦Takehiko Kobayakawa
photograph byGetty Images
posted2025/11/03 17:51
ドジャースがまれに見る名勝負を制する立役者となった日本人3人衆。ポストシーズンを解説しつづけてきた小早川氏が見た勝利の要因とは
好チーム・ブルージェイズを最後に上回れた理由
アレハンドロ・カーク選手やアディソン・バージャー選手のように個性がある面白い選手が多かったですし、ボー・ビシェット選手やジョージ・スプリンガー選手のように、プレー中に顔を歪めるほどの怪我をしていても、それをものともしないガッツも見せてくれました。
それでも最後にドジャースの一発攻勢と山本投手の壁に阻まれたわけですが、もうそこはほとんど差はなくて、時の運が勝負を分けたと言っていいようにも思います。ただ、強いて言えば、ドジャースが最後の最後の勝負どころで抑え込めた、最後の最後で一発を打てた要因はやっぱり、気持ちかもしれませんね。精神論とか根性と言いたいわけではないですが、追い込まれてからのドジャースのプレーには、開き直りとは違うメンタルの強さを感じました。
変な話、技術がなくても開き直ることはできるんです。しかしドジャースの面々には、自分の技術、能力と練習に裏付けられた技術があるから、どんなに崖っぷちでも自分たちにはやれるはずだ、という気持ちと冷静さがあったように思います。
山本由伸に心のMVPも進呈(笑)
ADVERTISEMENT
リーグ優勝決定シリーズを4勝3敗のチームと4連勝のチームがワールドシリーズで戦った過去4回は、すべて4連勝チームが敗れた歴史があることを以前お話ししましたが、ドジャースにはそういう流れの難しさもありました。ただ、今回のシリーズでは流れが悪くなったタイミングで、ことごとく山本投手がそれを食い止めて、初めてこのジンクスも破りました。
第3戦の延長18回、山本投手がブルペンで準備を始めたシーンは、実際投げなかったにもかかわらず、チームを鼓舞して流れを持ってきたという意味で、私にはもっとも印象深かったですね。ブルペンに向かう山本投手を見て、佐々木朗希投手が「マジ!?」と口走っていましたが、私も同じ気持ちでした。実際MVPを文句なく受賞しているわけですが、私の心のMVPも山本投手に進呈します(笑)。

