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「やっと千賀と甲斐に追いつけた」育成初の首位打者・牧原大成に千賀滉大、甲斐拓也まで「ソフトバンク史上最高の2010年育成ドラフト」のナゾ
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田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byRyoji Hanjo
posted2025/10/30 17:03
2022年9月25日のロッテ戦後、お立ち台に立った千賀滉大(左)と甲斐拓也(右)が牧原大成を呼び、同期3人で記念撮影
かねて小林はファーム拡充の原案を温めていた。日本球界の育成システムの不十分さを、身をもって痛感していたからでもあった。
「私はロッテを2年でクビになりました。単純に力が足りなかったからですが、私みたいな投手の登板間隔は『中2カ月』ですよ。野球シーズンは半年しかないのに」
東大出身プロとして注目された小林だったが、話題性だけで戦える世界ではない。
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そもそも二軍は選手育成機関ではあるが、出場するのは若手だけとは限らない。一軍で調子を落とした選手や故障明けの選手の調整の場でもある。彼らが優先的に出場機会を与えられ、次に来るのはドラフト上位や一軍昇格が近い有望株といった具合だ。つまり一軍のニーズや期待から少しでも外れると、二軍戦のメンバー表に名前を連ねるのが相当難しくなる。
また、小林の現役当時は一軍の出場選手登録枠が28人だった。支配下70名の4割。つまり半分以上を二軍が抱えるわけだが、その頃の二軍公式戦は年間90~100試合程度で、一軍ペナントレースに比べると絶対的に試合数が少なかった。
「試合でベンチ入りはします。だけど、試合序盤にブルペンで肩を作って、あとは待機。私だけでなく何人かがそうでした。選手本人が悔しいのもありますが、球団としてもスカウト活動に人もお金も使って、枠を使って獲得した選手なのだから力を見極められるところまでやらせたいですよ。選手は試合をしなければ成長しません。それを評価する場も試合です。どちらの立場においても不完全燃焼なのは選手にも球団にも損失でしかないのです」
米球界の巨大なマイナー組織をモデルに
小林の頭にあったのは米球界の巨大なマイナー組織だ。日本の二軍に相当するトリプルAの下にダブルAがある。そのまた下部組織としてシングルAやルーキーリーグと大別され、さらにシングルAは3つ、ルーキーリーグは2つと細分化されて、全部で7階層にもなっていた('21年以降は5階層に再編されている)。
小林が言葉を継ぐ。
「ホークスは'05年にソフトバンクの孫正義オーナーが球団を保有してから、一貫して10連覇を合言葉に常勝軍団を目指しています。FAや外国人補強で選手獲得もしますが、それだけで勝ち続けるチームをつくるのは無理。やはり育てないと。それもドラフト上位だけに頼っていても難しい。野球というのは基本的に選手の将来予測が難しいスポーツ。だからメジャーの各球団は300人以上もの選手を保有しているのです」
また、米球界の例を見てもFAで大枚をはたいて選手を獲得するより下部組織から育て上げる方が球団は投資額を抑えられる。それに日本のFA制度では、基本的には年に2人までしか獲得できず、外国人枠もある。なにより日本は生え抜き重視の風潮が今も根強い。這い上がった選手が活躍すればファンも喜ぶ。日本球界こそ選手を育てるのが大事。そのためにはマイナーの充実が絶対との考えに行き着いたのだ。
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